NEWS お知らせ

新春挨拶

新年明けましておめでとうございます。

 世界的にはロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるガザ地域への攻撃、シリアでのクーデターによる政変と目まぐるしい混乱が起きています。国内に目を転じれば衆議院選挙で過半数割れした中で石破政権が発足し、経済政策が後手に回り、エネルギー価格、消費者物価の高騰により国民の実質賃金は下がり続けています。こうした閉塞感はSNSでターゲットを探して血祭りにあげるといった風潮を生み出し、「和を以て尊しと為す」といった日本古来の文化が失われています。

 2024年6月に行われた診療報酬改定は些少なベースアップに留まり、病院本体のランニングコストを充填する改定とはなりませんでした。結果、コロナ加算で表面化しなかった民間病院の赤字体質が鮮明化し、いま一般科を含めると民間病院では2/3の病院が赤字経営となっています。こうした中で、2040年に向けた地域医療構想に精神科医療も参画して、少子高齢化によって起きることが予想される疾病構造の変化や、過疎化による精神科病床の稼働率の低下、医療従事者の減少、社会保障費の削減等に対応するために、地域特性を予想した精神科病床の削減改革に着手する必要に迫られています。病床削減に向けては100年間にわたって公立精神病床の代用精神病院として地域精神科医療に貢献してきた歴史を考慮させる必要性があると考えていますし、医療法で一般病床より広い面積の病室を求められてきたことも考慮されるべきと考えています。2年に一度の診療報酬改定で公共料金並みに抑えられてきた診療報酬は、食事療養費の高騰に見られるように急激な物価高騰に対応できる制度ではなく、短期的には中間改定、長期的には診療報酬の仕組み自体を物価、人件費、エネルギー等の高騰に連動できる仕組みに変えていかなければ、世界に類を見ない国民皆保険制度自体の崩壊に結びつく危険性を秘めていると感じています。地域で汗をかいて精神科医療に取り組んでいる仲間が、安定した病院経営を実現するための仕組みの構築に取り組んでまいる所存です。

(日本精神科病院協会 会長 山崎 學)