GUIDE 精神科医療ガイド

その他

今、精神科病院が取り組んでいること 家族会 DPAT 精神科医療関連系学会

①退院支援、そして地域移行:
精神科病院では、ノーマライゼイション(障害者と健常者とが区別されない社会への取り組み)の理念のもと、退院支援委員会などを設置し、入院が長期に及んだ患者様の地域での生活が可能になるよう退院支援に取り組んでいます。また、障害者総合支援法によって、相談支援の充実や地域で生活するための支援体制の充実などが図られるようになりました。退院後、安心した社会生活が可能になるように、居宅介護(ホームヘルプサービス)、自立訓練(生活訓練)、宿泊型自立訓練、共同生活援助(グループホーム)などを紹介し、通院治療の継続、訪問看護やデイケア参加を促しています。さらに就労移行支援、就労継続支援などの障害福祉サービス制度の利用を助言するなどして、患者様が安心して社会参加が出来るように取り組んでいます。
 
②病院アメニティと安全性の改善:
医療において安全性はもっとも重視される項目の一つですが、最近は快適性についても各病院で工夫されています。かつて病室は、一部屋に6人以上の病室が多くありましたが。より快適性を高めるため最近では4人以下の低人数部屋や個室化が進んでいます。また、売店や喫茶室、美容室などを設置する病院も増えてきています。
病棟設備では、手を近づけると水が出る自動水栓など、蛇口に手が触れないことによって院内感染のリスクを低減させるなどの工夫をしている病院が数多くあります。
 
③病院食をおいしく:
美味しい食事は人の心を和ませ、そして元気にさせます。精神科病院では入院療養している患者さまにできる限り美味しい食餌を食べていただき、心身の健康を取り戻してもらいたいと、医食同源の考え方を実践すべく三食の食事に工夫をこらしています。管理栄養士や調理師が栄養バランスはもちろんのこと、その季節の旬の食材を用いたメニューの開発、家庭の味に近い献立と味付けに工夫をこらし、ご当地メニューや我が国の多彩な食文化を取り入れるなどして美味しい食事作りに毎日奮闘しています。

精神障害者を持つご家族はいろいろと心配や不安を抱えがちです。ご家族同士が話し合え、情報を交換し、支えあえる場所が家族会です。病院にも地域にも家族会はありますが、病院で開かれている家族会は、病気への理解を助け、患者さま本人への接し方などを助言する家族教室の役割も担っています。一方地域での家族会は健康福祉センター等が支援しているケースが多く、病院の垣根を越えて地域での家族同士の交流や、行政等へ制度拡充を請求したり地域住民への啓蒙活動を行ったりしています。
現在でも精神障害への偏見はあり、悩みを他人に相談することに躊躇してしまいがちですが、一人で抱え込まず、家族会で話をし、互いに助言しあうことはご本人を支える上でも心強い場となることでしょう。詳しくは病院の医療相談室や地域の健康福祉センターにお問い合わせください。

DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)は自然災害や交通機関関連事故、犯罪事件などの大規模あるいは重大な災害の後、被災地域に入り、精神科医療および精神保健活動の支援を行う専門的なチームです。これらの災害が発生した地域は、災害ストレス等により人々に新たな精神心理的問題が生じ、精神保健と医療の需要が一気に増大するため、もともとの精神科医療が機能不全に陥ってしまいます。そこで、全国に組織されたDPATが被災地域に派遣され、精神保健医療ニーズの把握、他の保健医療体制や各種関係機関等との連携を行い、専門性の高い精神科医療の提供と精神保健活動の支援を行います。DPATは、各都道府県内に複数組織され、定期的に研修・訓練を受けています。
一方、DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)は、「災害急性期に活動する機動性のあるトレーニングを受けた医療チーム」であり、大規模災害や多傷病者の発生地域に48時間以内で活動する機動性のある専門的医療チームです。
両者の理念は類似しており、いずれもチームで活動する災害時派遣医療チームですが、特に、精神科領域の医療支援は多岐かつ長期に及ぶことが特徴です。日本精神科病院協会内にDPAT事務局が置かれ、毎年研修会を開催し、各自治体の開く研修会にも講師を派遣し、災害関連の精神科医療と保健の知識と技術の向上に努めています。

精神科医療は身体的、心理的、社会的に患者さんを診ていきます。従って、それぞれの領域の専門的な研究分野が数多くあります。例として、うつ病や統合失調症、認知症など疾患別、精神科病院、診療所、総合病院精神科など医療を提供する機関別、薬物療法やデイケア、リハビリテーションなど提供医療別、小児から高齢者など世代別もあります。
日本精神神経学会は、精神医学と精神科医療の総合的な学会です。若い医師が精神科専門医になるためのプログラムを統括する学会でもあります。日本臨床精神神経薬理学会や日本神経精神薬理学会は精神科医療で使用する向精神薬についての研究学会です。日本精神科医学会は、医師のみならず精神科医療に関わる全ての医療専門職が相互に議論する学会です。司法精神医学会は、成年後見制度や「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(医療観察法)など精神科医療と司法との関係性を議論する場です。他にもそれぞれの専門分野の精神科関連学会が数多くあり、医療専門職が日々研鑽を積んでいます。