NEWS お知らせ

新春挨拶

新年明けましておめでとうございます。
 新型コロナウイルス感染症はいまだ終息の気配なく、ウクライナ紛争も解決の兆しが見えない中で新年を迎えることになりました。新型コロナウイルス感染症は流行当初に比べると感染力は強くなった半面、重症化率は低くなり、ワクチンを始め、経口薬も開発され二類感染症から五類感染症への変更が取りざたされています。閉鎖空間が多い精神科病院にとってはクラスター感染のリスクが高く、実際多くの会員病院でクラスターが報告されています。
 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は国際社会にエネルギー資源、食糧問題、流通問題といった大きな混乱を引き起こしました。ロシア産天然ガスに依存してきたEU諸国とりわけドイツでは「緑の党」が主張してきた原子力発電抜きのクリーンエネルギー転換はとん挫し、2022年末に廃止する予定だった3基の原発を当分の間稼働することで混乱を回避すると報道されています。地球温暖化の元凶とされていた二酸化酸素問題においても多くの国で休止していた化石燃料による火力発電が復活し、わが国でも点検中の9基の原発の早期稼働、火力発電所の再開でエネルギー危機を回避しようとしています。石油・石炭・天然ガスといった化石燃料の国際相場の暴騰は電気代や化石燃料依存の生活用品の大幅な物価上昇を促し、陸海空の国際流通価格も暴騰し、市民生活に大きな影響が出ています。30年間据え置き状態の平均給与の中で国民の生活は困窮し、アメリカ発の市場原理主義に席巻された我が国は大きな岐路に立たされています。食料にしても自給率はカロリーベースで約30%と先進国ではまれな状態にありますが、国民の意識の中に不安がないのは摩訶不思議です。戦争は武力によるものだけではありません。食糧(加工野菜の約50%、種苗、鳥のヒナはほぼ100%輸入)、薬品(ジェネリックの原薬・バルクもほぼ100%輸入)、先端半導体(ほぼ100%輸入)と生活用品のかなりのサプライチェーンを外国に依存して生活しています。これらの生活物資の自給率を上げなければ万が一他国に侵略された時には数か月間で飢餓状態になることが明白な状態です。少子高齢化の中で持続可能な社会保障制度の検討が必要なことは当然ですが、身近な問題として国民の生命を守る最低限のライフラインの確保は更に重大な問題だと思っています。いままさに国民一人一人がこれらの問題に声を上げる時期に来ていると思います。

(日本精神科病院協会 会長 山崎學)