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改正精神保健福祉法案可決成立し、法施行へ。

 去る12月10日、精神保健法改正案を含む、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決成立されました。
 今回の改正精神保健福祉法では、「精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備」が謳われています。それでは、以下今回の改正の主な点を解説することとしましょう。

 

(1) 医療保護入院の見直し
 元来医療保護入院制度は、「基本的に本人の意思を尊重するという原則においても、症状の悪化により判断能力が低下するという精神疾患の特性を考慮して」、本人の同意が得られない場合においても入院治療へのアクセスを確保する必要から創設された経緯があります。精神保健指定医の判定の許、家族等1名の同意を得ることが要件となっています。今回の改正においては、①家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合にも、市町村長の同意を可能とする等、適切な医療を提供できるようになりました。②医療保護入院の入院期間を定め、一定期間ごとに入院の要否(病状、同意能力等)の確認を行うこととし、入院者の権利擁護を一層推進することとなりました。

(2)「入院者訪問支援事業」の創設
 精神科病院において、外部との面会交流を確保することは、患者の孤立感や自尊感情の低下を防ぐうえで重要です。今回、都道府県の任意事業として、入院者訪問支援事業が創設されることとなりました。これは、都道府県知事等が行う研修を修了した入院訪問支援者が、患者本人の希望により、精神科病院を訪問して、本人の話を丁寧に聴くとともに、必要な情報提供等を行うものです。

(3) 精神科病院における虐待防止に向けた取組の一層の推進
 従来から、精神科病院では従業者に対しての研修や患者さんへの相談支援体制等の虐待防止等の措置を行ってきました(間接的防止措置)。今回の改正では、これら虐待防止のための取組を管理者のリーダーシップのもと、組織全体で推進するために、①間接防止措置の内容の実施を精神科病院の管理者に義務付けました。②精神科病院の業務従事者による虐待を受けたと思われる患者を発見した者に速やかに都道府県等に通報することを義務付けて、あわせて通報者の保護を明確にしています。

 今後、改正精神保健福祉法は、官報に掲載される等の公布の手続きを経て、法律の目的等の総則の部分は令和5年4月1日から、残りの大部分は令和6年4月1日から施行(つまり実際に法律がスタート)します。

(常務理事 櫻木章司)