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新年明けましておめでとうございます

新年明けましておめでとうございます。
 ここ2年間コロナ禍の中であわただしく時が過ぎました。経済活動を再開した結果として年末からオミクロン株を中心とした第6波が押し寄せ始めました。年末・年始の人出を考えると想定内の事象と思います。緊急事態宣言が解除されたのも束の間で在日米軍基地から沖縄を中心としたオミクロン感染が日本全国に最悪第5波を超える勢いで広がっています。戦い方がわからなかった第1波から考えるとワクチン、抗体カクテル療法、飲み薬と武器が増えてきましたが、変異することで新たな感染の糸口を広げている新型コロナ感染症とはしばらく付き合わされるのでしょうか。弱毒化してインフルエンザ並みの季節性感染症に終息するといった楽観的な結末を期待しています。
 昨年末に大阪市北新地のクリニックビルでおきた拡大大量殺人事件は精神科医療の在り方について大きな問題点を投げかけました。多くの場合、自殺は自責的思考から派生する行動ですが、社会に責任を押し付けて自己を正当化する他責的思考から不特定多数の人間を巻き込んで大量殺人を行うケースがみられるようになりました。特に大阪のケースでは犯行前にテープで現場の隙間を目張りしたり、消火栓に接着剤を塗り込んで使用不能にしたりといった計画性のある犯行でした。通院歴2年の中で医師との感情のもつれが犯行に駆り立てたと考えますが、逃げ場のない診療所で逃げ道に放火して退路を断つという残忍性は想像できないものがあります。精神障害者の犯罪行為については昭和49年刑法の中に精神障害者については「治療処分」、薬物中毒者については「禁絶処分」を盛り込むという保安処分が検討されましたが、治安維持法に似るといったことから精神神経学会、日弁連、患者団体が反対して見送りになりました。平成13年池田小学校で8名殺害14名傷害という小学生無差別殺傷事件が起こり、平成15年医療観察法が成立しました。しかし医療観察法では国会審議の中で「治療可能性がある6疾患」に限定されて、治療可能性のないより重症患者は精神保健福祉法による措置入院で対応することになって現在に至っています。
 平成13年池田小学校事件、平成28年相模原障碍者施設殺傷事件の犯人はいずれも精神科治療歴があり、逮捕されても起訴されないで社会で生活していたとされています。ある日家族が不条理に殺されるといった事件をなくすには現行法では限界があると考えています。障害者の人権を担保しながら社会秩序をどのように担保していくのか真剣に考える時が迫っていると思っています。

(日本精神科病院協会 会長 山崎學)