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神出病院について

 日本の精神科医療において、昭和62年に精神保健指定医制度が制定され、精神保健指定医には「患者の人権や個人としての尊厳に配慮した精神医学的経験を有すること」が求められており、患者の人権を擁護する立場であることが強調されている。それにもかかわらず、会員病院以外も含め大和川病院事件(1997年)・国立療養所犀潟病院事件(1998年)・朝倉病院事件(2001年)・箕面ヶ丘病院事件(2001年)と続いた。 日本精神科病院協会(以下、日精協)では、このようなことが二度と起こらないようにするために「行動制限の最小化の提言」を行い、平素の研修会並びに通信教育制度を活用し「患者の人権や個人としての尊厳に配慮した精神科医療は勿論のこと、行動制限の最小化の重要性」について講義等を通して提唱し、近年は「認定精神科医療安全士制度」も立ち上げ、人権擁護の認識の拡充を行ってきている。

 しかしながら大変残念なことであるが、2020年3月、日精協兵庫県支部の会員病院であった神出病院で「看護師らによる患者さんに対する集団虐待暴行事件」が発覚し、関わった看護師等の有罪が確定したことは誠に遺憾である。

 また、日精協には、協会の事業目的達成のため、会員がこれに反する行為が疑われた場合、調査・指導を行うことを主眼として調査指導会議が設置されており、本事件が発覚した後、日精協としての事情説明等調査を依頼してきたが、施設内での新型コロナウイルス感染症発生や感染予防の観点等から調査の延期を希望するという、先方の理由から調査が延期されていたところ、3月に当該病院の院長交代を機に先方から改めて連絡がはいり、実施にこぎつけた次第である。

 院長、事務長を交代し、院内に各委員会を立ち上げる等再建に向けての取り組みは伺えたが、まだ道半ばの印象もあり、よりスピード感をもって変革に取り組まれることを望む旨伝えた。 後日、当該病院から院内運営体制を立て直し、日精協会員として相応しい病院となるため一旦退会する旨の申し出があり、5月の理事会で了承されたところである。

 今後も神出病院に対しては兵庫県精神科病院協会等を通じて、日精協が実施する研修会や教育制度の利用も促し、病院の資質向上の努力への援助を惜しまないことを伝達し、わが国の精神科医療の向上に日精協として努めていきたいと考えている。

日本精神科病院協会   会長  山崎 學