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令和2年度厚生労働省老人保健健康増進等事業/ 障害者総合福祉推進事業 報告書公開

 日本精神科病院協会では、令和2年度に厚生労働省老人保健健康増進等事業「認知症重症化予防(三次予防)に関する調査研究事業」(テーマ番号94)および厚生労働省障害者総合福祉推進事業「精神病床で身体合併症管理を必要とする入院患者に対する取組の実態調査」(37番事業)を受託し、このたび報告書を日本精神科病院協会ホームページに公開いたしました。

 
「認知症重症化予防(三次予防)に関する調査研究事業」について
 

 日本精神科病院協会では、令和2年度の老人保健健康増進等事業(テーマ94番)、「認知症重症化予防(三次予防)に関する調査研究事業」を受託しました。介護保険では「地域定着型介護サービス」において「認知症対応型通所介護」があり、認知機能が低下し、日常生活に支障を生じている要介護の高齢者等に対して、入浴・排泄・食事等の介護、レクリエーションや機能回復訓練を提供しています。しかし、医療保険における認知症専門の通院型デイケアである「重度認知症患者デイケア」についての社会の認知度は決して高いものではありません。医療保険における重度認知症患者デイケアの全国的な実態調査を行うことで、介護保険の認知症通所介護との役割・機能の違いを明確にし、互いの長所を利用し合うことで長く在宅生活を続けられるよう支援することは、新しい認知症の地域包括ケアシステム構築の形になりうると思われます。
 重度認知症患者デイケア(以下、認知症デイケア)の実施医療機関は全国で295施設(令和2年6月1日現在、地方厚生局ホームページ届出名簿より)であり、精神科病院関連が157施設、一般病院・クリニックが138施設であります。
 認知症デイケアはBPSDが著しいMレベル(認知症高齢者の日常生活自立度)であれば、軽度認知症(MCI)であっても重度認知症(CDR3)であっても利用することはできます。認知症デイケアの最大の特徴は医療保険によるサービスであり、認知症治療を専門とする精神科医師をはじめ、手厚く配置された多くの専門職(作業療法士、精神保健福祉士、公認心理師、看護師等)スタッフにより実施されていることです。認知症デイケアの実施内容を明らかにし、発症後の進行を遅らせる三次予防の実態調査を行い、認知症デイケアの有効性を検証することを目的としました。
 その結果、医療保険サービスと介護サービスを組み合わせる地域包括ケアは今後、認知症の進行予防(三次予防)に大いに役立つものと思われます。医療保険における「重度認知症患者デイケア」は認知症の重症化予防には必要不可欠な医療サービスであることを検証しました。

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(常務理事 渕野勝弘)
 
令和2年度厚生労働省 障害者総合福祉推進事業
「精神病床で身体合併症管理を必要とする入院患者に対する取組の実態調査」報告書公開
 

 近年、精神病床に入院中の患者さんの高齢化や新たに認知症の患者さんの入院が増加していること等により、精神病床に入院中である患者さんの身体合併症の治療や重症化防止のための管理の重要性はますます増大しています。しかしながら、従来より精神疾患を有する患者さんの一般病床での受け入れは困難とされ、緊急手術が必要等の一部のケースを除いて、そのまま精神病床での入院を継続して身体合併症治療を行うことが常態化していました。このため、今回の新型コロナウイルス感染症の例を引くまでもなく、転院して必要な医療を受けることができない現状が多く見られました。私たち日本精神科病院協会(以下、日精協)は、この間一貫して「障害の有無や軽重、入院形態にかかわらず、必要な医療の提供が妨げられるべきではない」との主張を繰り返し訴えてきました。
 今回日精協では、令和2年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業「精神病床で身体合併症管理を必要とする入院患者に対する取組の実態調査」を受託しました。これは、精神病床に入院中の身体合併症を有する患者さんについて、単科精神科病院で行っている身体合併症に対する診療状況、血液検査や画像診断を含む実施状況について、さらにいわゆる総合病院の精神病床を利用しての身体合併症治療の実態を明らかにすることを目的とするものです。
 調査方法としては、①全国1,620施設の精神病床を有している医療機関に対する質問紙調査票によるアンケート調査、②さらにより具体的な状況を明らかにするためのヒアリング調査を、精神病床80%以上の単科精神科病院7施設、精神病床20%未満のいわゆる総合病院3施設を選んで行いました。
 今回の調査の結果、①身体合併症患者の受け入れについて、それが可能になるまでの間、単科精神科病院で対応できる診断・治療能力の向上や検査・治療体制のさらなる充実が必要とされるが、そのためには診療報酬上の手当が必要であること、②いわゆる総合病院での対応として、特に夜間における精神科医師の確保が難しい場合には、一旦救急部が受け入れを行い、翌日精神科医の診察を仰いだり、精神科以外の医師が初期対応を行うためのプログラムを開発して、切れ目のないケアに取り組んでいること等が明らかになりました。日精協では、今回の結果を活かしつつ今後も身体合併症における病病連携の推進に向けて努力を重ねる所存です。

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(常務理事 櫻木章司)