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オンライン診療に対する日本精神科病院協会の見解
今回の新型コロナウイルス感染症に際して、病院を受診することを不安に思う受診者が相次ぎました。そうした人たちに対して、新型コロナウイルス感染症収束までの特例として緩和されたオンライン診療に対する規制を今後どうするかが、政府内で議論されています。日本精神病院協会では、政策委員会内に「オンライン診療に関するワーキンググループ」を立ち上げて、検討を重ねてきました。その答申を受けて、去る10月28日、田村憲久厚生労働大臣宛てに要望書を提出しました。
要望書では、まず診療に関する指針やガイドラインに沿ったオンライン診療の普及については容認しています。そのうえで、精神科医療においてオンライン診療が拡充されるにあたっては、利用者保護の観点からも十分な検討が必要であり、利用者の不利益につながる拙速な導入は避けなければならないとして、以下の視点からの問題点について指摘を行っています。
1. 有効性の側面
精神医学的な診断のためには、本人からの病歴聴取に加え、家族や第三者からの情報収集が欠かせません。また対面による言語的及び非言語的なコミュニケーションが治療技法の基本となっています。同時に対面による面接は医師と患者さんとの出会いであり、治療の第一歩であるという大事な側面があります。
2. 安全性の側面
オンライン診療は、医師と患者さんのやりとりがPC/スマホの画面越しであり、患者 さんの状態を直接把握できず、状態の変化を見落とす危険があります。一例を挙げると、希死念慮の強い患者さんに対して、自殺防止のための適切な介入ができない可能性があります。
3. 秘匿性の側面
精神医療における面接の際には、まず患者さんや家族が医師を信頼し、安心し、心を開 いて話せるような雰囲気づくりが必要です。患者さんは、自分だけの心に秘めていたものを 医師に明らかにするのであり、患者さんの告白は秘匿されなければなりません。現状のオンライン診療では、この秘匿性が十分に確保できない可能性があります。
4. 向精神薬取り扱いの側面
今回の時限的なオンライン診療の規制緩和においても、麻薬及び向精神薬の処方は禁 止されています。しかし、初診での向精神薬の処方件数が23種88件にも及んでいるとの報告があります。向精神薬の取扱いについては、依存性、大量服薬による自殺企図、売却目的での取得等の問題を包含しており、厳しい規制が必要です。
さらには、カウンセリングと称して多額の請求を行う商業主義的な行為の蔓延などの 問題点を列挙して、利用者本位の視点からの適切なルール作りを求めています。