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令和元年度日本精神科病院協会海外医療施設視察研修旅行報告

 今年の日本精神科病院協会の海外医療施設視察旅行は、令和元年6月23日(土)から6月30日(日)までの9日間の日程で昨年に続きイタリア2病院を視察した。

 現在のイタリアにおいて、精神疾患の患者様に対する治療は入院医療を最小限に留め、それに代わり地域精神保健センターによる在宅ケア―を中心とした治療が続けられている。 昨年は1978年に「バザリア法」が制定されて40年、イタリアの精神科の現状を確認するためにイタリア北部のヴィラ ナポレオン(ヴェニス)とのサンパオロ病院(ミラノ)を見学した。両病院で「イタリアは経済を中心とする深刻な南北問題と州制度による著しい地域格差(政治・経済から風俗・文化まで)が存在している。それは精神科医療にも通じる」との説明があり、今回はその地域差を検証すべくイタリア南部(ローマ・フィレンツェ)の2病院を視察した。

 6月25日に訪問したローマ民間病院 Villa Giuseppinaを視察した。この病院は修道院を改築した修道院併設の入院施設(88床)である。以前は修道者達が精神病の人々の世話をしていた施設であったが、1910年に精神病患者の為の医療施設として設立された。1900年代は女性の精神患者のための施設であったが、現在は精神科外来とデイケアも行われている。シスターと院長に温かく迎えられ施設の説明を受けた。要旨は以下のとおりである。
・イタリアは医療の財源は州ごとに確保されている。地方財政の赤字は医療と介護に影響があり、地方格差が大きい。入院の際の費用は自治体や所得によっても違う。
・1978年にバザリア法が公布され”本人の尊厳を尊重する”がモットーであるが、患者の責任は家族が担っており、入院できない患者の自殺が増え問題になっている。
・強制入院は総合病院の中の精神科(約15床)のみで対応し、民間病院は任意入院のみである。総合病院で治療が終わった患者は精神保健センター(各地に精神科医療・福祉の拠点)で対応(外来・デイケア)する。同院は地域の精神保健センターから紹介された患者が任意で入院する施設で、最高3ヶ月の期限付きである(実情は何年もいるらしい)。

 次に6月27日にフィレンッェのGareggi University Hospitalを訪問した。大学病院(1,255床)で、入院病棟・外来・救急医療も行っている。明るいショッピングモールのような病院であった。精神科の責任者の医師から説明を受けた。要旨は以下のとおりである。
・イタリアの国民保険について説明を受けた(ホームドクター制)。
・同院では感情障害や神経症を中心に外来やデイケアを行っている。
・同院では統合失調症や感情障害は治療対象であるが、自傷他害がある患者や病識のない患者は公立の総合病院精神科に救急搬送している。そこで市長(代理公務員?)が強制入院を許可する。1週間観察し、改善しなければ1週間ずつ入院期間が延長される。治療に同意できる状態になれば同院で外来通院を開始する。

(文責・南 尚希)