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平成30年度日本精神科病院協会海外医療施設視察研修旅行報告

 今年の日本精神科病院協会の海外医療施設視察旅行は、平成30年6月23日(土)から7月1日(日)までの9日間の日程で行われ、イタリア2病院とイギリス1施設を視察した。

 イタリアは、過去には精神科病院が存在していたが、1960年代に精神科医フランコ・バザリアが、精神科閉鎖病棟の解体と患者たちの地域生活を支援する活動をスタートし、1970年代には国をあげての運動となり、1978年にはついに「180号法(バザリア法)」という精神科病院を廃絶する法律が制定されている。

 現在のイタリアにおいて、精神疾患の患者に対する治療は、入院医療を最小限に留め、それに代わり地域精神保健センターによる在宅ケアを中心とした治療が続けられている。

 今年は1978年に「バザリア法」が制定され40年が経過したことから、イタリアの精神科の現状について確認することが今回の研修の主な目的であった。

 最初にヴェニスのヴィラ ナポレオンを見学した。90床の民間の精神科病院で職員数55名(精神科医9名、内科医5名、看護師25名、心理士4名)で入院中心(平均入院日数:30日)、家庭医からの紹介や紹介状がなくても入院できる。明るく開放的な病院であった。

 次にミラノのサンパオロ病院を視察した。2年前にできたばかりのロンバルディア州立の総合病院であり、3病院が合併した大規模病院(900床)病院として、救急医療も行っている。ミラノの人口の1/4(約90万人)をカバーし、精神科の入院病棟もあり、アルコール・薬物依存症にも対応している。

 当日は、精神科の教授より話を伺った。「1978年の法律「バザリア法」に従っているが、40年が経過し、精神疾患が社会的疾患と考えられるようになった。以前のような入院ではなく長期入院していた患者に対して個別にきめ細かい対応ができる。患者に対して偏見がなくなった点が良かった。しかし、州ごとに対応しているため、法律は1つだが地域差がある」と説明があった。

 最後にスコットランド、エジンバラのマギーズセンターを訪問した。(上段写真)
マギーズセンターはイギリスの造園家で乳がんを患ったマギー・K・ジェンクスさんが「がん患者が悲しみや恐怖で過ごすのではなく、生きる希望や喜びを感じられる施設を」との思いから夫とともにエジンバラで着手した。日本では、2016年にマギーズ東京(https://maggiestokyo.org/)が東京都江東区豊洲に開設されている。今回、山崎会長の「今後精神科医療は、がん患者のメンタルヘルスに対応するべきだ」との強い思いで発祥地のエジンバラの施設を見学することになった。

 マギーズセンターはエジンバラの病院の敷地内にあり、緑豊かで温かみのある施設だった。センター長(男性看護師)のアンダーソン氏に対応して頂いた。

 「現在、マギーズセンターは東京を含め世界に数ヶ所運営している。この施設は働くがん患者のサポートをし、患者は自分の治療・病態を確かめることができる。施設の目的は、患者に対して指示や指導することではなく、患者本人を元気づけ、希望をもって生活できるように手助けをすることだ」と語られた。

(病院経営管理委員長 南 尚希)