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熊本地震 におけるDPAT活動報告

 

 日本精神科病院協会は、平成27年より厚生労働省から委託を受けDPAT事務局を運営しています。DPATとは、災害派遣精神医療チーム(Disaster Psychiatric Assistance Team)の略であり、大規模災害時に被災地域の精神保健医療ニーズへの対応や専門性の高い精神科医療の提供等を行うための専門医療チームです。

 令和8年7月28日16時27分、熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、熊本県内では広い範囲で大きな被害が生じました。発災当日の夕刻には熊本県DPAT調整本部が設置されるとともに、DPAT事務局においても発災直後からDPAT事務局本部を設置し、熊本県及び厚生労働省はじめ関係各省と連携して情報収集を図り、全国の日本DPATの派遣調整を開始しました。発災初日に大分県及び福岡県の2隊の日本DPATが現地入りを開始し、その後も途切れなく全国の日本DPATが順次派遣され、被災地の支援にあたりました。

 今回の災害では、特に被害の大きかった八代地域や宇城地域などの熊本県南部を中心にDPAT活動拠点本部が設置され、精神科緊急事例への対応、入院患者の搬送支援、避難所支援、地域精神保健活動への協力、支援者支援等が実施されました。日本DPATは発災初日から9月3日まで継続して派遣され、その後は熊本県内のDPATへ段階的に活動が引き継がれています。

 特筆すべき点として、発災直後の超急性期の段階から県外の日本DPATの派遣が迅速に行われました。また、熊本県精神科病院協会を中心として県内の精神科病院間の連携が早期に構築され、被災した精神科病院からの入院患者の転院搬送が速やかに実施されました。さらに、行政機関、保健所、大学病院等を含めた地域連携も早期から機能し、地域の関係機関による「共助」と、日本DPATによる「公助」が相互に補完し合いながら支援活動が展開されたことは、今回の災害対応の大きな特徴であったと考えています。

 DPAT活動日報の集計によると、7月31日から9月3日までの期間に262件の地域支援の依頼が寄せられ、そのうち190件に対応しました。また、8月21日にはDPATインストラクターが中心となって熊本県DPAT研修を臨時開催し、熊本県内の関係者305名が受講するなど、被災地における支援活動と並行して地域の支援体制強化も進めることが出来ました。

 東日本大震災、平成28年熊本地震、令和6年能登半島地震などを経て培われた災害精神医療の知見は、今回の迅速な初動対応と継続的な支援活動にも活かされました。発災直後から全国の日本DPATが被災地で活動し、急性期から復旧・復興期への移行を見据えた支援が実施されたことは、今後の災害精神医療体制の発展を示すものであると考えます。

 最後に、今回の災害対応に際し、日本DPATの派遣調整及び現地活動にご尽力いただいた全国の自治体、医療機関、精神保健医療福祉関係者並びにDPAT関係者の皆様に心より敬意と感謝を申し上げます。

 県内DPATを中心とした支援活動が継続されています。被災された方々や支援にあたられている関係者の皆様のご苦労は今なお続いており、復旧・復興に向けては中長期的な取組が必要です。日精協及びDPAT事務局としても、現地の状況を注視しながら関係機関との連携を継続し、引き続き必要な支援に取り組んで参ります。

(日精協理事・DPAT事務局参与 小原尚利)