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経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 受け入れに関する問題点の指摘と提言 -四病協-

2010/03/12

厚生労働大臣 長妻 昭 殿
外務大臣 岡田 克也 殿
経済産業大臣 直嶋 正行 殿
法務大臣 千葉 景子 殿
国家戦略担当大臣 仙谷 由人 殿
民主党幹事長 小沢 一郎 殿
四 病 院 団 体 協 議 会
 社団法人 日本病院会 会長 山本修三
 社団法人 全日本病院協会 会長 西澤寛俊
 社団法人 日本医療法人協会 会長 日野頌三
 社団法人 日本精神科病院協会 会長 鮫島 健

 
EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者等の受け入れは、経済活動の連携の強化の観点から、二国間の協定に基づいて公的な枠組みで行なわれるもので、その詳細は資料1の通りである。
 
受け入れが一番早く始まったインドネシア人候補者の来日から一年余りが経ち、これまでの経過から、重大な問題点が浮き彫りになってきた。問題の諸点は本事 業の存続を危うくしかねないものであり、受け入れ医療機関ならびに外国人候補者にも実りのない過大な負担を強いるものと考えられた。
 
このような事態を踏まえ、四病院団体協議会はインドネシア人看護師候補者の例を重点に検討を行い、以下に問題点を指摘し、提言を行なうものである。

Ⅰ.問題点

  1. 候補者の日本語能力の絶対的な不足
    就労前に現地と日本で計6ヶ月間の日本語教育を受けるものの、研修後の  日本語能力は貧弱で、簡単な挨拶ができ、ひらがなを読める程度であり、会話は辞 書を手にしてもなかなか通じなかった。したがって当初は病院の指導者は、業務をはじめ、買い物等の日常生活にも常に付き添わなければならないのが実状で あった。
    その後一年近く、各病院は指導看護師やインドネシア語の出来るボランティア等が、毎週数回ずつ指導を行なう等の努力を行なってきたが、現在でも漢字の読解ははなはだ困難である。
  2. 国家試験に必要な知識を勉強するためのインドネシア語に対訳された本格的なテキストがない
  3. 候補者達は日本の医療・介護及び関連する保険制度について知識を持ち合 わせず、母国での看護教育も日本の国試の内容と異なっている。看護師国家試 験は日本人生徒が看護学校で3年間勉強し、ようやく90%が合格する難しいものである。看護助手として勤務する傍ら、貧弱な日本語力でこれらの知識を試験 に合格する程度にまで修得するのは極めて困難である。ちなみに第1回目の試験で合格者は皆無であった。最近、介護福祉士の試験について漢字にふりがなをつ ける提案があったが、看護師候補者の日本語を初め国試に関連した諸分野に対する基礎学力と理解力ではたとえそれが行なわれても効果は薄いと考えられる。
  4. 病院入職後は、日本語教育や受験対策は殆ど病院任せで有効な援助がない。
  5. 候補者の指導には、専門教育を受けたインドネシア語に堪能な日本語教師(資料2)が不可欠だが、そのような教師を受け入れ病院が獲得するのはほぼ不可能である。なお、ボランティアによる指導は効果が少ない。
  6. 看護師候補者は日本では看護助手として働くが、看護師としての彼らの本来の仕事とは異なるので、志気が上がりにくく、ストレスも多い。日本の看護技術を学ぶのも難しい。
  7. 給与から税金や社会保険料が差し引かれることについて説明を受けていなかったため、病院担当者は説明して理解を得るのに難渋した。
  8. 教育担当看護師の負担がはなはだ大きい上に病院の経済的負担も少なくない(資料3)。また、候補者の職場での働きは、言語や習慣の不慣れ等から、日本人看護助手の半分程度に過ぎないにもかかわらず、給与は日本人と同等以上とされているのは妥当ではない。

Ⅱ.提言

(当面の対策)

  1. 本国で十分な日本語教育を行い(少なくとも18ヵ月程度)、日本語能力試験(資料4)2級以上合格等を来日の条件にする。
  2. 国家試験の範囲を網羅した外国人候補者の母国語と日本語の両方で書かれたテキスト等を早急に整える
  3. 入国後の外国人候補者に、日本語、日本の医療や医療制度、介護や介護保険制度、看護師国家試験対策等を集団で一定期間あるいは定期的に教える教育が必要である(看護師養成機関等で行う)。
  4. EPAの取り決めを見直し、看護師国家試験不合格者には、試験問題の平易な准看護師受験を認め、准看護師資格を取得した候補者には、滞在ビザを2年間程度延長して、看護師国家試験の受験機会を増やす。このことは事業本来の目的に沿うものと考える。
  5. 日本での処遇や看護師国家試験の内容等について、事前に書面を用いて十分説明する。

(中長期的な対策)

  1. 日本語レベル2級以上の新卒の学生を日本の看護教育機関で教育して受験させたほうが長い目でみれば確実である。外国での看護師資格や実務経験は必要ない。
  2. 国際貢献の面から、インターナショナルナーシングカレッジを創設する。
    海外での事前教育後、アジア全域から優秀な人材を募集、全寮制で育成した上でアジア諸国に還元し、アジア諸国との親善・交流を促進する。事業の土台が健全で強固であれば協力病院は増えるものと考えられる。その費用はODA予算と受け入れ病院の折半とする。

(資料/PDFファイル)