ABOUT 日精協について

平成22年度障害保健福祉関係予算編成について(要望)

日精協発第09042-1号
日精協発第09042-2号

2009/05/08
2009/05/26

(別記)殿 ※巻末表記

 

社団法人日本精神科病院協会 会長 鮫島 健

謹啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。また、日頃より当協会の活動にご理解、ご指導を賜り厚くお礼申し上げます。
 
さて、障害者自立支援法は施行3年後の見直しが図られていますが、知的・身体障害者福祉に比べて立遅れていた精神障害者福祉は、今尚、立遅れの構造を引き ずったままであります。予算編成にあたっては、「三障害共通」の予算枠組みとは別に、精神障害者福祉の「立遅れ解消」に重点化した具体的な施策づくりとそ れに基づいた予算編成が行われるよう要望いたします。
また、精神保健指定医は精神保健福祉法にもとづき診療に附帯する特有な専任業務が多く、認知症疾患に係わるサポート医・要介護認定や障害程度区分等の認定 審査委員等々の地域における院外業務への協力など、その負担は多伎にわたり、過重化の一途を辿ってきております。さらに、夜間・休日等精神科救急医療への 参加、更には医療観察法に係る鑑定入院・指定通院医療など政策医療関連への積極的協力など、民間精神科病院の努力も極限に迫りつつあります。これらに対す る正当な社会的な評価を求めます。
このような視点から、平成22年度予算の編成にあたっては、下記のとおり要望いたしますので特段のご配慮をお願いいたします。

謹白

[1]精神障害者福祉サービスの立遅れを解消し、地域生活への移行を推進するための特別予算の確保について
 
① 精神障害者の生活支援施設整備に向けて、独自の施設整備費の予算化を
 
「必ずしも入院を要しない」精神障害者が地域生活に移行し、また、地域での自立的生活が困難となっても安心して地域での生活を維持するためには、日中活動と居住サービスを一体的に提供し、且つ、夜間入所支援を伴う精神障害者生活支援施設の整備が不可欠です。
身体・知的障害者の場合は障害者支援施設が用意されていますが、精神障害者には歴史的に福祉法が制定されていないことから、障害者自立支援法には移行でき る生活支援施設類型が用意されていません。病院が生活施設の役割を代替する時代を終焉させ、「安心・安住の場」を病院から地域に移行するためには、精神障 害者の生活支援施設を整備し独自に施設整備費を予算化することが不可欠であります。
 
② 病院から地域生活に移行する低所得者に対し、「補足給付」相当額の経済的支援を
 
精神障害者の地域生活への移行を促進するためには、地域での生活が経済的に成り立つための基盤整備が不可欠です。収入が障害基礎年金2級(月額6.6万 円)のみであれば、グループホーム等を活用した地域生活は不可能であります。国が算定する食費・光熱水費等の自己負担額5万8千円(施設入所の場合)に居 室費を含めたとしても、国保料2,000円、自立支援医療自己負担2,500円を負担すれば「手許に残る金額」は3,500円です。長期入院では各種控除 もあり約2万6千円が手許に残ります。これでは、地域生活に移行する意欲も削がれてしまいます。せめて施設入所者に対する「補足給付」相当額を、「居住 費」等の形で補助する経済的支援が必要不可欠であります。

[2]精神保健福祉法に基づく以下の業務を社会的に評価し、そのための予算措置の新設、充実について
 
① 精神保健指定医の指定業務を正当に評価する予算の新設
 
人権に配慮しつつ必要止むを得ない行動制限を行なうことは、入院精神科医療に附帯する精神保健指定医の重要な専門業務のひとつであります。多伎にわたるこ れら業務は、精神保健福祉法に基づく専門業務であるにも拘らず評価されておらず、一部の自治体で措置・医療保護入院届け、定期病状報告の文書料が支払われ ているのみであります。精神保健福祉法に基づく専門業務は、一般医療にはない精神保健指定医に課せられた業務であることから、これらを社会的に適正評価す る予算を新設されたい。
 
② 精神科救急医療運営事業に係る委託料の抜本的見直しについて
 
精神科救急医療体制整備事業では基幹的役割を担う常時対応型施設が位置付けられたが、依然として病院群輪番施設の果たす役割が基軸であることは言うまでも ない。本年4月から委託料のうち「空床確保料」が10,200円に引上げられたが、病院群輪番施設としての救急医療参画に対する評価は据え置かれており、 引き続き社会的な高い評価と抜本的な見直しを求めるものであります。常時対応型施設においては救急入院後引き続き3ケ月間にわたって高額な診療報酬が設定 されており、病院群輪番施設には診療報酬上では全く配慮されていないことに強い違和感を覚えざるを得ない。
また、精神科救急医療において入院を要しない一次(ソフト)救急患者への対応を軸として、体制の整備が一部の精神科救急医療圏で構築され、また準備しよう とする圏域もあります。今次の救急医療体制整備事業では外来対応型が掲げられてはいますが、そのための予算措置が用意されておらず、次年度で確実に予算化 されたい。

[3]医療観察法における通院医療費等の大幅な増額について
 
指定通院医療機関の行う通院医療は、多職種による手厚いチーム医療と支援が必要であり、医療機関の負担は大きい。平成20年度ではご配慮いただき若干の増 額が図られ、また今年度から複数の指定通院患者に関する加算が行なわれましたが、今後の通院対象者の増加する現状を考慮するならば、依然として対応できな くなることは明らかであります。引き続き「医学管理料」の大幅な増額とともに、訪問看護等における「交通費の補助」について必要な予算を確保されたい。

[4]こどもの心の問題、産業保健・自殺対策などメンタルヘルス領域の診療体制整備に十分な予算の確保を
 
近年大きな社会的問題となっているこれらメンタルヘルス領域の対策については、精神科医療の関与は必要不可欠であります。しかし現状では、児童・思春期医 療においては不採算事業のため施設整備を含めて参入が困難であり、解決の糸口さえ見えない状況です。また、産業保健・自殺予防などうつ病・ストレス障害に 対して適切な医療を提供するためには、短期間の入院を含めた治療環境の整備が必要であります。従って、多くの精神科病院がこれらの領域に関与できるよう、 施設整備費を含む予算的配慮が必要であります。

[5]老人性認知症疾患対策予算の大幅な確保について
 
我が国の老人性認知症疾患対策の重要性がより増大することは衆知の事実であり、「認知症疾患医療センター」整備事業として再編されたことは評価できます。 認知症患者の発症初期から専門医療相談、鑑別診断、治療方針決定、保健・医療・福祉サービスの情報提供を行なうとともに、介護保険による事業とも連携した サービスを提供するセンター運営費補助が1ケ所689万円にアップされましたが、経験ある専従スタッフ1人の人件費相当に過ぎず、当該センターの設置・運 営は依然として困難であることは明らかであります。かかる対策に係わる体制整備を確実に実施するために、運営費補助の大幅な見直しを図られたい。
また、随伴精神症状により家庭や施設では処遇が困難な認知症疾患患者を受入れる専門治療病床は圧倒的に不足しており、随伴精神症状が比較的安定し介護の必 要度が高くなった認知症疾患患者を引き続き処遇できる病床整備は喫緊の課題であります。認知症疾患の専門治療病床の効率的な活用のためにも、これら病床整 備のための予算を充分に確保されたい。

[提出先一覧]

日精協発第09042-1号

〔平成21年5月8日付提出〕
厚生労働副大臣 大村 秀章 先生
参議院議員 西島 英利 先生

〔平成21年5月26日付提出〕
衆議院議員 長勢 甚遠 先生
衆議院議員 木村 義雄 先生
衆議院議員 鈴木 俊一 先生
衆議院議員 鴨下 一郎 先生
衆議院議員 根本 匠  先生
衆議院議員 塩崎 恭久 先生
衆議院議員 萩生田光一 先生
衆議院議員 山口 俊一 先生
衆議院議員 菅原 一秀 先生
衆議院議員 田村 憲久 先生
衆議院議員 石崎 岳  先生
衆議院議員 宮澤 洋一 先生
衆議院議員 清水鴻一郎 先生
参議院議員 衛藤 晟一 先生
参議院議員 古川 俊治 先生

〔平成21年6月4日付提出〕
衆議院議員 安倍 晋三 先生

日精協発第09042-2号

〔平成21年5月8日付提出〕
厚生労働省
障害保健福祉部長 木倉 敬之 殿
企画課長 蒲原 基道 殿
障害福祉課長 藤井 康弘 殿
精神・障害保健課長 福島 靖正 殿