日本人洗脳計画

2015年9月 山崎 學

 昭和20年8月、連合国軍が日本を占領すると、すぐに GHQ/SCAP(総司令部・連合国軍最高司令官)が設置され、参謀部と幕僚部が組織され、幕僚部の中にCIE(Civil Information and Educational Section)が設置された。このCIEが中心となって、戦争についての罪悪感を日本人の心に植え付けるための宣伝計画WGIP(War Guilt Information Program)が進められた。敗戦から1カ月後の9月10日、GHQは「新聞報道取り締まり方針」を発し、9月19日に「日本出版法」(Press Code for Japan)を制定した。その中で30項目からなる「削除及び発行禁止対象」のカテゴリーが決められた。最初の5項目として、①SCAP(連合国軍最高司 令官もしくは総司令部)に対する批判、②極東国際軍事裁判批判、③GHQが日本国憲法を起草したことに対する批判、④検閲制度への言及、⑤アメリカ合衆国 への批判、が挙げられている。日本が自主的に作成したと言われる日本国憲法について、GHQ自ら関与を肯定し、批判を禁止しているとは笑止千万である。か くして日本国憲法は、戦勝国は敗戦国の法体系を変えてはいけないとする、ハーグ陸戦条約に明確に違反しているのである。
 また、同年12月8日、GHQは自分たちで記述した1万5,000語からなる「太平洋戦争史」を各新聞社に10回にわたり掲載するように命令した。このようにして戦勝国側の言い分が一方的に垂れ流され、GHQによる日本人洗脳計画が開始された。
 さらに同年12月21日、CIE初代局長のKen R Dyke准将から「戦争犯罪被疑者の逮捕と裁判に関係して使われる」とする文書〈イ〉がGHQ各局長宛てに出された。この中で侵略戦争を計画した者たちを 有罪にする適切な論理的根拠を示し、戦争犯罪人に日本が現在置かれた苦境に対する責任を負わせ、日本人自身にも、軍国主義的政権ができることを許し、積極 的に支持した責任を分かち合うべきであることを示すことが記され、政治家、産業人、指導的報道関係者など、日本国内のいろいろなグループは戦争責任を分か ち合うべきとしている。
 また、これと並行して日本人洗脳作戦の「検閲」 と「焚書」が行われた。検閲については昭和23年にGHQ検閲スタッフ370名、日本人嘱託5,700名が1日5,000本におよぶ新聞記事すべてを チェックし、一般人の手紙や私信も月に400万通が開封され、電信や電話も盗聴された。しかし、巧妙に検閲の痕跡を残さなかったために、多くの日本人は検 閲が行われていることに気づかなかった。このようにGHQは「新憲法」を日本人に押し付けた一方で、明白な憲法違反の「検閲」を行っていた。また、約 8,000冊の焚書については出版社や書店にあった在庫をすべて没収する一方で、図書館の棚にある書籍には手をつけないという巧妙さであった。サンフラン シスコ平和条約11条を、アメリカの意図を汲んだ外務省はJudgementsを「判決」と訳すべきところを「裁判」と語訳し、東京裁判を受け入れたと国 民に誤解させるようにしむけた。GHQがこだわったのは、東京裁判で東條英機が主張した「東京裁判は復讐劇だ」という反論と、原爆投下に対する抗議であっ た。鳩山一郎の『原爆批判談話』を掲載した朝日新聞は、昭和20年9月18日から2日間発行禁止処分を受けている。昭和23年3月3日にCIEから出され た文書〈ヘ〉には、戦犯裁判における検察側の最終弁論の全文を発行するよう、朝日新聞あるいは他の同様な出版社に推奨すると、朝日新聞を名指しで記載して いる。朝鮮戦争の作戦をめぐり、トルーマン大統領に解任されたマッカーサー元帥はアメリカ上院で「日本がアメリカとの戦争に飛び込んだ理由は、もっぱら安 全保障のためである」と陳述し、侵略戦争を否定している。
 今、国会では安全保障関連法案をめぐって審議が中断している。民主党の辻元清美議員は自らの秘書給与疑惑の禊が済んだかのようにしゃしゃり出てくる。左翼 は安保法案を戦争法案と位置付け、軍靴の響き、徴兵制復活と陳腐な表現で騒ぎ立てる。マスコミは、安倍内閣の支持率は危険域に達したと煽りたてる。歴代の 意気地のなかった総理大臣が手をつけられなかった集団的自衛権に踏み込む解釈をして、支持率が下がるのは当たり前のことである。戦後70年談話で書かれた ように、孫子の代まで戦争責任を押しつけ謝り続けたいのか。戦争を体験していない世代にいくら語り継いでも、集団で飛来する爆撃機のあの恐怖は想像できな いであろう。広島の慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれているが、原爆は一瞬にして20万人の非戦闘員を虐殺し、長崎で は15万人が犠牲になっている。No more Hiroshima、Nagasakiでは犠牲者が浮かばれない。Remember Hiroshima、Nagasakiではないか。
 夏の夜は暑くて長い。

〈参考文献〉
・関野通夫:日本人を狂わせた洗脳工作 いまなお続く占領軍の心理作戦.自由社ブックレット1.自由社、2015.

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