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「認知症サミット日本後継イベント」に参画


昨年12月に英国で開かれた「主要国(G8)認知症サミット」では共同声明において「リーダーシップ、分野横断的なパートナーシップ、ノウリッジトランスレーション/KnowledgeTranslation」の3つの事項が盛り込まれました。それを受け、日本は「新しいケアと予防のモデル」をテーマに後継イベントを平成26115日~6日、東京都内で国際会議を開催しました。WHOOECD、各国政府の当局者や認知症の当事者など約300人が出席し、症状の各段階に応じた支援や科学的な予防と治療などについて意見交換が行われました。

日 本精神科病院協会は専門分科会に参加しブース内展示を行いました。「日本における認知症対策と精神科医療」について英文スライドを掲示し、山崎學会長はじ め日精協の高齢者医療・介護保険委員会が中心となり認知症に対する医療の必要性をアピールしました。早期発見、早期治療に加え、たとえ
BPSD(認知症による行動・心理症状)が出現し入院したとしても、一日でも早い退院を実現するための認知症クリニカルパス(退院支援パス)の活用、地域や自宅で安全に生活が続けられるための認知症デイ・ケアクリニカルパス(外来)の普及に取り組んでいることを紹介しました。

高齢化に伴う認知症の人の増加を世界共通の課題と捉えて、国際的な対策を進めようとする目的の会議です。しかし、OECDWHOの関係者は疾病が何であれ、日本の精神病床数の多さと平均在院日数の長さを常に指摘し、日本の精神科医療は良くないと決めつけています。医療制度、保険制度、経済を総合的に検証し報告をしてもらいたいのですが、どうやら修正は不可能のようです。日精協が2013年にOECDの定める基準で平均在院日数を調査したところ55.6日でした。これは諸外国に比べても遜色のない数字です。各国の統計項目に合わせた日本の精神科医療の数値を厚労省は示すべきと考えます。

今回の国際会議では、これまでの我が国の「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」に代わる「新たな国家戦略」が安部晋三総理により表明されました。20129月 に公表されたオレンジプランは国家戦略ではなかったため、総理の表明は本気で政府一丸となって認知症問題に取り組む姿勢を内外に示したものと言えます。塩 崎恭久厚生労働大臣はこれを受け、オレンジプランを見直し省庁横断的な取り組みを進め、年末の政府予算案の編成に反映させるため年内に策定し、来年度から 実施する方針です。2016年度からは認知症の予防や治療法の開発に向け、全国の約1万人の認知症でない人を対象にした追跡調査の実施を決めています。

認知症の当事者、家族が安心して暮らせる社会を実現することは日本にとっても大きな課題です。最速で高齢化が進む日本こそ、社会を挙げた取り組みのモデルを世界に示していかなければならないと考えます。

※クリニカルパス…患者が目指す最適な状態(到達目標)に向け、医療の介入内容をスケジュール表にまとめたもの

常務理事 渕野 勝弘