EDUCATION 各種研修会

2016年度
日本精神科医学会学術教育研修会報告 事務部門

2016年10月20日(木)~21日(金)
熊本ホテルキャッスル

日本精神科医学会学術教育研修会事務部門は平成28年10月20日(木)・21日(金)の2日間にわたって熊本市の熊本ホテルキャッスルにて開催された。各地より315名の参加者があった。
開講式は、日精協熊本県支部長 犬飼邦明先生が開会の挨拶を、続いて日本精神科医学会長 山崎學先生が主催者としての挨拶をされた。さらに来賓として、熊本県健康福祉部子ども・障がい福祉局長 松永寿様、熊本県精神科協会長 相澤明憲先生から祝辞をいただいた。

第1日目の講演Ⅰは弓削病院長 相澤明憲先生の座長で、日精協 山崎學会長より『精神科医療の将来展望』と題して講演いただいた。精神保健福祉行政の歩みとして、ライシャワー事件、WHOクラーク勧告など、この50年の精神科医療の出来事や変化に続き、最新の精神保健福祉のデータ分析に基づいた話題提供・問題提起がなされた。また、精神科病院に対する問題点や将来ビジョンをふまえた今後の方向性が示された。
ランチョンセミナーは、八代更生病院理事長・院長 宮本憲司朗先生の座長で、産業医科大学精神医学教室教授 吉村玲児先生による『うつ病の現状とストレスチェック制度』と題したセミナーが行われた。うつ病についての概説に続いて、企業内におけるストレスチェックの目的・具体的な手法や評価方法について実践的な講演がなされた。
講演Ⅱは、くまもと心療病院理事長・院長 荒木邦生先生の座長で益城病院理事長 犬飼邦明先生による『理事長として事務長に期待すること』と題した講演が行われた。熊本県内で行われたアンケート結果に基づき、理論的な考察と必要とされる能力とについて説明がなされた。また、熊本地震で経験したエピソードや失敗談を示しながら、危機管理についてわかりやすく説明がなされた。
講演Ⅲは、益城病院理事長 犬飼邦明先生の座長で国立保健医療科学院 上席主任研究官 石峯康浩先生による『精神科病院におけるリスク管理』と題した講演が行われた。東日本大震災や熊本地震での事例を交えて、非常時に精神科病院がとるべき対応について概説がなされた。とくに情報共有と発信における報道対応を中心としたコミュニケーションの基本について、その注意点を含めて詳しく説明がなされた。
第1日目の最後の講演Ⅳは、中山記念病院理事長・院長 信岡幸彦先生の座長で慶應義塾大学大学院非常勤講師(大成建設(株)ビジネス・ソリューション部次長)岡田哲先生による『根拠ある施設計画 ~行政施策と地域の状況を踏まえて、永続的な経営につなげる施設とは~』と題した講演が行われた。行政動向と疾患構造の変化予測についての概説に続いて、地域(熊本県を中心に)の状況分析の説明が詳細になされた。これに基づいて、実際の施工例を示しながら適切な経営と運営の方向性について示された。
夕刻より同会場にて盛大に懇親会が催された。本研修会の開催に尽力をいただいた日精協熊本県支部の先生方の細やかな気配りにより、すべての参加者が心地よい時間を過ごすことができた。

第2日目の講演Ⅴは、ニキハーティーホスピタル院長 寺岡和廣先生の座長で、『平成28年度診療報酬改定~精神科病院の経営戦略』と題して(株)ヘルスケア経営研究所副所長 酒井麻由美先生が講演をされた。昨年4月の改定についての概説と今後の精神科医療の経済的な動向予測が示され、これに基づいた適正な経営指針について、シミュレーションを提示しながら説明された。とくに地域移行や専門性の強化について、実際の事例を交えて明快に説明された。
続いて、最後に阿蘇やまなみ病院理事長・院長 高森薫生先生の座長にて『平成28年熊本地震の被災報告』が3病院からなされた。益城病院事務次長 宮崎翔氏・希望ヶ丘病院事務長 西郡圭二氏・あおば病院事務長 井手幸則氏の順に、それぞれの病院での被災状況や対応・機能の復旧、そして現在の状況について報告がなされた。突然の出来事によって生じた混乱の中で、いずれの病院においても苦悩と戸惑いを抱えながらも、院長・事務長の指揮の下で患者・職員の安全に腐心し1人の死者も出すことなく避難を完遂し、復旧に向けて力強く歩まれていることが示された。また、熊本県内外の病院群の一致した協力体制についても言及され、本研修聴講者すべてが深く聞き入っていた。
講演終了後、直ちに閉講式が行われた。日精協より受講者代表への受講証書授与、熊本県支部への感謝状が読み上げられた。最後に日精協熊本県支部長 犬飼邦明先生より閉講の挨拶があり、2日間の全日程が終了した。

本研修会の報告を終えるにあたり、被災された多くの方々や病院の一日も早い復興を祈念申し上げるとともに、犬飼邦明支部長をはじめ、企画・運営された熊本県支部会員病院の先生方および関係者の方々に対し深く感謝申し上げます。
(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会)