EDUCATION 各種研修会

2011年度
日本精神科医学会学術教育研修会報告 薬剤師部門

2011年10月27日(木)~28日(金)
琵琶湖ホテル(滋賀県)

日本精神科病院協会学術教育研修会薬剤師部門は、平成23年10月27日 (木)・28日(金)の2日間にわたって滋賀県の琵琶湖畔の琵琶湖ホテルにて開催 され、各地より207名の参加者があった。当研修会は今年度から日本病院薬剤師会の精神科薬物療法認定薬剤師の資格申請および専門薬剤師の更新申請の際、 ポイントとして加算できることとなった。午前10時より日本精神科病院協会滋賀県支部長石田展弥先生による開講の挨拶に続いて、山崎學会長の挨拶、来賓の 方々から挨拶をいただいた。
 
 第1日目、1つ目のセッションでは、獨協医科大学精神神経医学講座主任教授下田和孝先生により「抗うつ薬の正しい使い方」と題して講演いただいた。近年、精神神経疾患の市場規模は拡大の一途をたどっており、なかでも抗うつ薬の市場は右肩上がりを示している。
 
 副作用軽減を目標として開発された抗うつ薬が、精神科医以外の医師により容易に使用される例が多くなってきている。副作用が少なく安全であるという誤解 が生じてないだろうか。抗うつ薬のTDM(薬物治療モニタリング)はほとんど行われておらず、診療報酬も保証されていないことが問題であり、今後の課題と なることなどを述べられた。
 
 ランチョンセミナーは三座行われ、どのセミナーも盛況であった。
 
 第1日目、2つ目のセッションでは、滋賀医科大学精神医学講座教授山田尚登先生により「睡眠障害の薬物療法」と題して講演いただいた。人はどうして眠く なるのか、人には眠らせる脳と眠る脳があり、その神経機構の説明をいただいた。気分障害と睡眠の関係についての不眠治療の優先が、治療効果があるというエ ビデンスが出ている。年齢と睡眠時間の関係、詳細な不眠の問診が大切であるなど、幅広く講演をいただいた。
 
 第1日目、最終セッションでは関西医科大学精神神経科学教室教授木下利彦先生から「統合失調症の薬物療法」として講演をいただいた。先生がスイス留学さ れていた病院にいまも残っているオイゲン・ブロイラー執務室の興味深い写真紹介から始まり、統合失調症患者の見ている世界や無意識の世界などを大変たくさ んの絵画を通じてその特徴を示していただいた。
 
 夕刻からの懇親会は、琵琶湖ホテル隣接港から湖上クルーズを楽しませていただき、日精協滋賀県支部の先生方のきめ細やかな気配りにより琵琶湖上で大変雰囲気のある懇親会であった。帰港前には盛大な花火も上がり、大いに盛り上がった夜となった。
 
 第2日目、1つ目のセッションでは山崎學会長により「精神科医療の将来の展望」と題して講演をいただいた。①精神保健福祉の動向、②精神障害者の地域移 行、③認知症、④自殺対策、⑤医療観察法、⑥精神科医療の将来像、⑦社会保障・税一体改革、⑧東日本大震災の各詳細データをスライドで示しながら説明され た。
 
 第2日目、本最終講は名城大学薬学部病院薬学研究室教授亀井浩行先生により「統合失調症の薬物治療における薬剤師の役割」と題して講演が行われた。統合 失調症患者ではその疾患特性として病識の得られないことが多く、そのために服薬アドヒアランスが不良となる問題点を挙げられた。統合失調症の長期目標とし ての社会復帰と再発防止には服薬継続が大切で、薬剤師による服薬指導などにおいても、統合失調症患者の服薬アドヒアランスを向上させることが重要であると 述べ、講演を終えられた。
 
 講演の終了後、ただちに閉講式が行われた。会長から聴講者への修了証書の交付、および滋賀県支部への感謝状の謹呈、挨拶に引き続いて、滋賀県支部長に閉講挨拶をいただき、2日間にわたる研修会が無事終了した。
 
 最後に今回担当された滋賀県支部の支部長、諸先輩先生方を始め多くの関係病院スタッフのご努力により円滑に運営が執り行われたことに深く感謝いたします。

(学術教育推進機構・学術研修委員会 / 山口 哲顕  安藤 琢弥)