2018年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 事務部門

期日/2018年7月19日(木)~20日(金)
会場/城山観光ホテル(鹿児島県)

 平成30年度の日本精神科医学会学術教育研修会事務部門は、平成30年7月19日(木)、20日(金)の両日にわたり、日本精神科病院協会鹿児島県支部の担当で鹿児島市の城山ホテル鹿児島にて開催された。「転換期を迎えた精神科病院の運営戦略」のテーマのもと、全国から361名の参加があり、盛大に行われた。

 開講式では、日精協鹿児島県支部長・横山桂先生の開講の挨拶に続き、日本精神科医学会・山崎學学会長が挨拶をされた。

 1日目の講演1は、「精神科医療の将来展望」のテーマで山崎學会長が講演をされた。会長は①精神保健福祉行政の歩み、②精神保健福祉の動向、③認知症、④精神科医療の将来像の順で講演を進められた。精神科医療の歴史から始まり、最新のデータに基づき精神保健福祉の動向について説明された後、認知症の問題について述べられ、認知症は慢性で重度の進行性変性疾患であり、初期・軽症の段階から医療が関わることが望ましいと強調された。精神科医療の将来像については、この50年間の社会の変化について述べられ、今後将来の人口減少、高齢化社会を見据えた財政と社会保障のあり方について考えていくことの重要性について説明された。最後に今年の診療報酬・介護報酬同時改定のポイントと介護医療院について触れ、講演を終えられた。

 講演2は「平成30年度診療報酬改定のポイント」のテーマで、医療法人蔦の会たなか病院副院長松本善郎先生が講演された。先生は診療報酬改定のポイントとして、外来項目では①医薬品の適正使用の推進、②自治体と連携した措置入院後の通院精神療法等の評価、③精神疾患患者に対する訪問支援の充実を挙げられ、説明された。次に、入院項目として①認知症の者に対する適切な医療の評価、②地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価、③チーム医療等の推進等の勤務環境の改善について述べられた。今年度の診療報酬改定の重要なポイントについてわかりやすく的確に話され、参加した事務部門のスタッフにとって非常に有意義な講演であった。

 昼食後の講演3は「医療従事者のためのアンガーマネジメント」のテーマで、メディカルマナー研究所のアンガーマネジメントコンサルト鈴木直樹先生が講演された。怒ることがいけないのではなく、後悔しない怒り方(「“怒らなかったけれど”怒っておけばよかった」も含む)をするためにどうするかを説明された。まず、6秒間我慢する・怒りの程度をなるべく客観的に自己評価する・そのうえでどう対応するか、の3つの観点からわかりやすく実際的にお話しいただいた。怒りは他者へと連鎖していく傾向があり、関係する人々の関係を損なったり職場の生産性を落とすことがある。その連鎖を断ち切るために、責任ある立場の人にはとくにこの講演は有益だったと思われる。

 講演4は「明治維新と西郷隆盛」のテーマで、鹿児島市立維新ふるさと館特別顧問の福田賢治先生にご講演いただいた。ちょうど、現在放映中の大河ドラマは「西郷どん」であるが、ドラマとしての改変が加わっていると注意され、西郷隆盛と彼に関係する人々の生育史ならびにその背景となる薩摩・大隅・奄美群島の土地柄についてもわかりやすく話していただいた。島津氏が江戸や京都から遠い所にありながら中央政界で力を持ち得た理由として、長期間にわたり朝廷と幕府との間で重層的な姻戚関係を築いてきたことを挙げられた。先生は以前に鹿児島大学附属小学校校長をお務めになったとのことで、ドラマに登場する人物を育てた「郷中教育」についても熱心にお話しいただいた。上級者が下級者を教え互いに育て合う自治的な教育システムは、われわれの職場にも応用できる部分があるかもしれない。

 1日目の研修会終了後、懇親会が同ホテルロイヤルガーデンで催された。懇親会では、地元の食材や芋焼酎に加え、鹿児島県を拠点として活躍するジャズピアニスト松本圭使さんとジャズボーカリスト有川久美子さんの素敵な演奏があり、和やかな雰囲気のなかで全国から集まった大勢の病院事務部門スタッフ同士の親睦が図られた。

 2日目最初の講演5は「外国人技能実習制度(介護職)について」のテーマで、日精協事務局長中山拓治氏が講演された。最初に、外国人技能実習制度の概要について述べられ、実習生に必要なコミュニケーション能力として実習2年目に移行する際に日本語能力検定「N3」が要件となることから、日精協が受け入れる実習生は現地にて原則9カ月間の日本語教育を実施し、入国までに「N3」程度の日本語能力を身につけた者になると説明された。また、技能実習生の処遇(賃金等)や実習実施機関の役割・要件、費用についても詳しく説明された。今後日精協は、株式会社「エレメント」、ベトナム政府認定の送り出し機関「JVSグループ」と協力し、ベトナムの医療短期大学、看護大学と提携して卒業生を日本語研修センターや日本式介護職育成センターで教育し、日本に送り出す計画であると述べられ、外国人人材の受け入れを検討する精神科病院にとって非常に参考となる内容の講演であった。

 研修会最後となる講演6は「これからの精神科病院の経営戦略」のテーマで株式会社M&Cパートナーコンサルティング取締役の酒井麻由美先生にお話しいただいた。2018年診療報酬・介護報酬同時改定のポイントとして、地域包括ケア・社会と経済の変化に対応するためのパラダイムシフト(人と設備の評価から、取り組みと成果を評価する方向へ)を挙げられた。そのうえで、診療報酬改定の基本方針として、①地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進、②新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実、③医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進の3点を示された。次に、「精神科医療の地域移行に向けての本格改定は2020年」と予測され、今は長期入院患者(とくに高齢者)の受け皿づくりを強化すべきであると言われた。そのために介護との連携は必須であり、要介護状態ではない長期入院者についての共生型サービスを用いた地域移行に関連した診療報酬を解説された。さらに、地域移行が進むに伴い病床稼働率が低下することへの対応として、短期入院・多職種連携・機能分化と機能強化などの方策を示唆された。

 講演終了後に閉講式が行われ、日本精神科医学会から受講者代表への受講証書授与に続き、日精協鹿児島県支部へ感謝状が贈呈された。最後に日精協鹿児島県支部長横山桂先生が閉講の挨拶をされ、2日間の全日程を無事終了した。

 終わりに、本研修会の企画・運営に当たられた横山桂鹿児島県支部長並びに鹿児島県支部の諸先生方およびスタッフの皆様方に御礼申し上げます。

(日本精神科医学会学術教育推進制度学術研修分科会/棚橋 裕 稲野 秀)

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