2017年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 作業療法士部門

期日/2017年11月23日(木)~24日(金)
会場/ホテルハマツ (福島県)

 平成29年度の日本精神科医学会学術教育研修会 作業療法士部門は、平成29年11月23日(木)、24日(金)の両日にわたり、日本精神科病院協会福島県支部の担当で郡山市のホテルハマツにて開催された。「作業療法の未来 ~作業療法の内観と生活支援に役立つ技を磨く~」のテーマの下、全国から167名の参加があり、盛大に行われた。

 開講式は、日精協福島県支部長・渡部康先生の開会の挨拶に続き、日本精神科医学会・山崎學学会長が挨拶をされた。その後、来賓として福島県精神科病院協会会長の沼田吉彦先生が祝辞を述べられた。
 第1日目の会長講演は「精神科医療の将来展望」のテーマで山崎學会長が講演された。講演は、精神科医療の歴史から始まり、最新のデータに基づく精神保健福祉の動向、少子高齢化・人口減少問題等について説明されたあと、国の財政と社会保障費支出の問題、平成30年度の診療報酬・介護報酬同時改定について述べられた。最後に精神科医療の課題について話され、講演を終えられた。多くのスライドを駆使してわかりやすく説明され、山崎學会長の考えが参加者に十分伝わり、非常に意義深い講演であった。
 教育講演1は「精神科領域で生活行為向上マネジメント(MTDLP)を活用しよう」のテーマで石川県立高松病院 作業療法科 科長・村井千賀先生が講演された。村井先生は、最初に病棟のレクリエーションをイメージした作業療法から個人特有の生活行為に関与する作業療法活動に転換することの重要性について述べられた。そのためICF(国際生活機能分類)の基本的考え方が重要であり、それに基づきMTDLPでは本人の生活行為アセスメントを実施し、生活行為向上プランを作成する。MTDLPはOTの見える化を図るツールであり、同じ視点で考えられることから多職種協働による包括的支援マネジメントを機能させることにつながると説明された。そのため、今後MTDLPを精神科領域で普及させていくことが大切であると強調され、講演を締めくくられた。
 教育講演2は「認知症に関わる作業療法士に今求められる役割」のテーマで、医療法人社団慈泉会 介護老人保健施設ひもろぎの園 リハビリテーション科長・石井利幸先生が講演された。認知症の生活行為の障害には環境要因が大きく関わっており、とくにBPSDの発生・悪化については不適切な人的環境が大きな原因になっていると指摘され、認知症ケアでは環境要因を変化させることで本人の状態が安定する場合が多いと話された。そのため、OTの重要な役割は、①丁寧なアセスメントと介入すべきポイントの見極め、②「作業の適用」と環境調整であり、普段の生活の中から、特別な課題ではなく、歯磨き、お茶入れから手続き記憶、実行機能の評価が、会話から近時記憶、遠隔記憶、ワーキングメモリーの評価ができ、実際に作業を行う場面で残存能力を評価することの重要性について説明をされた。
 研修1日目最後のシンポジウムでは、最初に「まちづくり活動で出会った皆さんから学んだ、まちの中で暮らすこと、働くこと」と題してNPO法人那須フロンティア 地域生活支援センターゆずり葉 施設長・遠藤真史先生が講演された。遠藤先生の就労支援のコンセプトは「就労の可能性を予測し、その人らしい就業定着をつくる」というものであった。予測とは本人の歴史や生活環境、生活能力をアセスメントし、「働いてこんな暮らしがしたい」などの仮説をたてて効果的な支援をすることと話され、それが結果として就業定着につながり、その人らしい生き方や人生につながっていくと語られた。また、支援の手段として地域に飛び込み、地域の人との交流を広げていくことが重要で、専門職とだけではなく、さまざまな人々と会っていくべきと語られた。
 次に、「キングコングの挑戦」と題して、株式会社NSPキングコング 専務取締役・仲地宗之先生の講演が行われた。沖縄市で以前からあった焼肉レストランを平成23年に就労継続支援A型事業として立ち上げ、平成28年6月にはA型事業所を休止し障害者全員を一般雇用することができ、黒字経営を継続しているという話であった。障害者の「個性」を活かし、モチベーションを保っていく工夫や、経営を健全に維持していくための勉強会を開くなどのさまざまな取り組みについて話され、働くことでどんな生活になるのかというイメージを共有することが重要で、本人がどうなりたいかを感じ支援していく必要性を強調された。
 2人のシンポジストの講演後、活発に質疑応答がなされ、シンポジウムは終了した。
 第1日目の研修会終了後、懇親会が同ホテルで催された。懇親会では参加者の病院紹介やハワイアンダンスのアトラクションもあり、福島県支部の病院スタッフの協力の下、和やかな雰囲気の中で全国から集まった病院作業療法士同士の懇親が図られた。

 第2日目は、朝8時から3会場で同時にモーニングセミナーが開催された。テーマはそれぞれ「発達障害に関する精神科作業療法」(国際医療福祉大学保健医療学部作業療法学科 助教・野崎智仁先生)、「家族支援に関する精神科作業療法」(あさかホスピタル リハビリテーショングループチーフ・三浦祐司先生)、「高次脳機能障害に関する精神科作業療法」(NPO法人日本脳外傷友の会ナナ クラブハウスすてっぷなな 統括所長・野々垣睦美先生)であり、各会場大勢の参加者で盛況であった。
 第2日目最初の特別講演1は「精神科医療保健福祉の新たなステージ」のテーマで、あさかホスピタル 理事長・院長 佐久間啓先生が講演された。最初に、今後の精神科医療では、①急性期医療の充実、②地域精神科医療・地域生活支援の充実、③認知症対策、④メンタルヘルスと自殺予防、⑤児童思春期医療の充実が重要であると述べられた。次に精神科地域包括ケアシステムの概念を、あさかホスピタルグループの活動を通して説明された。同グループでは4法人と1会社が一体となり、専門領域ごとに医療・保健・福祉・介護が連携して6つの包括チームを地域に展開し、グループ全体として、誰もが幸せに生きる社会を目指し、共生社会の創造という視点で活動していると説明された。最後に作業療法士の生活の場での支援が重要であると強調され、非常に示唆に富んだ内容の講演であった。
 研修会最後となる特別講演2は「bio-psycho-socialの視点とEthical Life」のテーマで東邦大学医学部精神神経医学講座 主任教授・水野雅文先生が講演された。医療において法は外面的な行為を規定していると位置づけ、倫理は内面的なルールと話され、臨床における倫理的主義として、「功利主義」「義務論」「徳倫理」「ケアの倫理」を挙げられた。また、患者の非自発的あるいは望まない治療を施すより、本人の自律性を最大限に尊重する臨床の場での倫理について述べられた。医療倫理について深く語られたが、水野先生の見解として、倫理的判断に絶対的正解はないと締めくくられ、講演を終えられた。
 講演終了後に閉講式が行われ、日本精神科医学会から受講者代表への受講証書授与に続き、日精協福島県支部へ感謝状が贈呈された。最後に日精協福島県支部長・渡部康先生が閉講の挨拶をされ、2日間の全日程を無事終了した。
 おわりに、本研修会の企画・運営に当たられた渡部康福島県支部長ならびに福島県支部の諸先生方およびスタッフの皆様方に御礼申し上げます。

(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会)

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