2017年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 PSW部門

期日/2017年11月30日(木)~12月1日(金)
会場/京成ホテルミラマーレ(千葉県)

平成29年度日本精神科医学会学術教育研修会 PSW部門は、平成29年11月30日(木)、12月1日(金)の両日にわたり、日本精神科病院協会千葉県支部の担当で「変革期の精神科病院におけるPSWの役割を問い直す」をテ−マに千葉市の京成ホテルミラマーレを会場に開催され、全国各地より約226名の受講生が参加した。

開講式では日精協千葉県支部長の木村 章先生が開講の挨拶をされ、続いて日本精神科医学会・山崎學学会長が挨拶をされた。来賓として千葉県知事・森田健作様(代理 千葉県健康福祉部保健医療担当部長・岡田就将様)、千葉市長・熊谷俊人様よりそれぞれご祝辞を頂戴した。

第1日目午前の会長講演は「精神科医療の将来展望」と題して、日精協・山崎學会長が講演をされた。明治時代から現代にかけての精神保健福祉行政の歩みについては、不幸な事故や事件を経て法改正が重ねられ、収容から治療、そして地域移行に向かっていると話された。次に精神保健福祉の動向、認知症、精神科医療の将来像等について、①会員病院数と精神科認可病床数の変遷、②疾患別の入院患者数および在院日数の推移と国内外の比較、③高齢化社会に向けての人口動態予測や介護、看取り、経済に関する推移と予測、および政策に関して、④平成29年度社会保障関係予算のポイントおよび平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定について、今後の精神科医療の課題についてなどの話をされた。

第1日目午後の特別講演Ⅰは「薬物療法の実際」と題して、木村病院 院長・渡邉博幸先生が講演された。内容は中枢神経系用薬の歴史や年間生産金額の推移に関する説明に続き、①平成28年度の向精神薬処方の制限に関して、②抗精神病薬などによる二次性陰性症状などの副作用について、③SCAP法による抗精神病薬の減薬について、④抗精神病薬の処方における適切な初期評価と継続的なモニタリングの重要性、抗うつ薬処方時の留意点とTCA、SSRI、SNRI、NaSSAそれぞれの利点および問題点、⑤抗うつ薬に関してセロトニン症候群や衝動性亢進のリスクについて、⑥抗うつ薬の離脱症候群について、⑦多剤vs単剤、および症状再燃に配慮し治療継続とするか、内服中止を優先し治療終結とするか、⑧抗不安薬および睡眠薬処方の適正化について、⑨ベンゾジアゼピン系薬物の精神依存と身体依存(退薬症状)については、症状急性期の一時的な処方に留めて短時間作用型を避け、ゆっくりとした減量(4週間で1/4量ずつ減らす)を心がけるなどの話をされた。

次に、特別講演Ⅱは「オープンダイアローグ」と題して筑波大学医学医療系社会精神保健学 教授・斎藤 環先生が講演された。オープンダイアローグは1980年代からフィンランドの西ラップランド地方で実践されている統合失調症のケア技法で、治療チームは発症直後の急性期患者や家族からの求めに応じ24時間以内にクライアントの自宅に赴き、危機が解消するまで毎日会い続ける。治療者全員がセラピストとして平等であり、「診断」や「治療方針」に固執しない。治療チーム(2〜3人)とクライアントチーム(患者本人、家族、関係者)は分かれて座り、まず前半はファシリテーターから「今日は何について話しましょうか?」などと“開かれた質問”から口火を切る。「調子はどうですか?」などと“文脈”はつくらない。クライアントの辛さや苦しさの言語化を図りながら、その人の世界、主観を全員で共有する。後半はファシリテーターの合図でリフレクティングをする。クライアントチームとの間には「透明な壁」を想定し、クライアントや家族とは目を合わせない。こんな対応をしてみてはという提案やアドバイスもここで行うが、アドバイスのためだけの時間とは考えない。ミーティングの連続性を保ち、入院や薬物治療はなるべく行わずに「対話」で急性精神病を改善するとの内容だった。

初日の研修会終了後、同ホテルにおいて引き続き懇親会が開催された。懇親会では参加者全員が楽しいひとときを過ごし、盛会のうちに終了した。

第2日目の特別講演Ⅲは「アウトリーチの実践」と題して、総合病院国保旭中央病院 アウトリーチチームリーダー・片倉知雄先生が講演された。

まず、旭中央病院訪問・地域生活支援チーム(CMHT)は、重度精神障害者でも地域で安心して暮らしながら1つでも多くの楽しみや生きがいを見つけることを支援し、地方型(田舎型)地域生活支援を目標としている。同チームの主な仕事となる日々の業務として、①訪問(アウトリーチ)+地域移行(退院)支援、②旭市と社会復帰施設の従事者の支援+保健所との連携、その他の重要な業務として、③社会資源の創設、④講演・広報活動・ピアサポーター養成・研修医等の研修プログラムを挙げられた。その中で、地域移行を可能にする旭市の取り組みとして、①長期入院患者の退院、②新しい長期入院患者をつくらない仕組み、③グループホーム世話人等の地域支援者と医療機関の連携、④住居支援、⑤アウトリーチに関して具体的に説明され、事例を挙げながら実際の活動の紹介があった。最後に、「声なき声を聴き、その人に合ったニーズに応えていきたい。普段できていないことにチャレンジをしていきたい」と話され、講演を終えた。

研修会最後のシンポジウムは「『退院支援』〜どうしてる?〜」をテーマに4人のシンポジスト(浅井病院 理事長・浅井禎之先生、大多喜病院 院長・鶴岡義明、NPO法人ほっとハート PSW・松尾明子氏、木村病院 PSW・堀池恵美氏)が意見を述べられた。

一般社団法人千葉県精神保健福祉士協会会員に対して行われた平成26年度改正の精神保健福祉法に関する意識調査の集計結果をもとに、入口(保護者制度の廃止、市町村長同意)、中間(入院診療計画書、退院後生活環境相談員、医療保護入院・退院支援委員会、退院に向けた取り組み)、出口(退院促進、地域の連携)の3つを論点とし、各々の地域および医療機関・施設の特徴・役割が説明され、さまざまな立場からの意見が交わされた。保護者制度が廃止されたことで家族等の同意が得やすくなり事務が簡素化したことや、家族の心理的負担が減少する等の好意的な意見がある反面、非自発的入院の導入がしやすくなったことで人権意識が薄まり、以前のほうが家庭裁判所での選任を受けるなど法律上の適正な手続きが保たれていたという否定的な意見もあった。また、関係性の悪い家族に同意を求めることへの疑問・心配や、市町村長同意が得られにくくなったという意見もみられた。その他には、入院診療計画書提示の義務化や退院後生活環境相談員の配置により、入院の早い段階から退院に向けての支援が行えるようになったという建設的な意見があった。最後に、座長の成田病院 PSW・山崎久之先生が「入口に介入して、出口のところももう少し力を入れてもらいたい。チーム(多職種)でやっていき、患者に関心を向けていくこと、患者の主体性を尊重して関わっていくことが大切である」とまとめられ、シンポジウムを終えた。

引き続き閉講式が行われた。日本精神科医学会から受講者代表への受講証書授与がなされ、さらに日精協千葉県支部長・木村 章先生へ感謝状が贈呈された。続いて日精協からの挨拶のあと、日精協千葉県支部学術教育研修会実行委員長・木村直人先生が閉講の挨拶をされ、2日間の全日程を終了した。

おわりに、本研修会の企画・運営にあたられた木村 章支部長ならびに千葉県支部の諸先生、およびスタッフの皆様方に深く感謝申し上げるとともに、千葉県支部の今後のご発展をお祈り申し上げたい。
(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会/鶴岡 義明  西紋 孝一)

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