2017年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 薬剤師部門

期日/2017年7月13日(木)~14日(金)
会場/新潟グランドホテル(新潟県)

日本精神科病院協会学術教育研修会 薬剤師部門は、平成29年7月13日(木)・14日(金)の2日間にわたって新潟市の新潟グランドホテルにて「『Challenge to Change!』─明日の精神科薬剤師に求められていること─」というテーマで開催され、受講生129名の参加を得た。開講式は日精協新潟県支部長・松田ひろし先生と日本精神科医学会・山崎學学会長の挨拶で始まり、来賓として新潟県福祉保健部・藤田伸一副部長、新潟県医師会・吉田俊明理事が挨拶をされた。

引き続き行われた会長講演では、山崎學会長が『精神科医療の将来展望』(座長:松田ひろし先生 新潟県支部長)と題して講演された。その内容として、①精神保健福祉行政の歩み、②精神保健福祉の動向(データ編)を説明され、最後に精神科医療の課題を話された。豊富な見識の下、今後われわれが取り組むべき道を示された。

講演1では、東邦大学薬学部医療薬学教育センター 臨床薬学研究室教授・吉尾隆先生による「『日本精神薬学会創立』~精神科薬剤師にとって必要な学会として~」(座長:加藤剛先生 所沢慈光病院薬局長)と題しての講演があった。平成28年9月に日本精神薬学会が吉尾先生を中心に設立され、その経緯をご自分の経歴を含めて話された。今後はこの学会を通して精神科薬剤師が集い、研究を積極的に行っていくことにより、EBMに基づいた情報提供をチーム医療の中で行い、臨床現場における高い実践能力をつけていくことを目指していることを述べられた。

ランチョンセミナーは、田宮病院院長・渡部和成先生が『統合失調症治療でLAIを位置づける』との題で講演をされた。

午後からは、浅井病院薬剤部長・松田公子先生と田宮病院薬局長・佐合絵里先生の座長にて、「明日の精神科薬剤師に求められていること」と題してシンポジウムが行われた。

前半は薬剤師の取り組みとして4名の先生方から発表がなされた。まず、「精神科薬剤師の活動」として東京女子医大薬剤部薬剤師長・高橋結花先生よりベンゾジアゼピン系薬剤の問題点について概説されたのち、東京女子医大での取り組みについて紹介がなされた。次に所沢慈光病院薬局長・加藤剛先生より、病院薬局-保険薬局-大学薬局での相互の連携について、その取り組みが紹介された。3番目に精神科でのアウトリーチにおける薬局の果たす役割について、西熊谷病院薬局主任・渡邊康一先生より訪問看護への同行や薬剤師外来など実際に体験された内容を交えて紹介がなされた。前半の最後に、アイ調剤薬局薬局長・成井繁先生より保険薬局(かかりつけ薬局)での精神科患者の服薬指導について、具体例を示されながら副作用の伝え方や話し言葉の工夫の紹介がなされた。

後半は、南浜病院病院長・後藤雅博先生により、医師の立場から「薬剤師に望むこと」として、多職種チーム医療の一員としての必要性や病院の健全な運営に薬剤師が欠かせない存在であることが、具体的な事例を交えて説明された。

先生方の発表終了後、壇上にて討論会が行われた。聴講者からの質問が多数出され、熱心な討論が行われた。

夕刻より同会場にて盛大に懇親会が催された。本研修会の開催に尽力をいただいた日精協新潟県支部の先生方の細やかな気配りにより、すべての参加者が心地よい時間を過ごすことができた。

第2日目の講演2は、新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野教授・染矢俊幸先生により『抗精神病薬による治療と身体リスク』(座長:金子尚史先生 大島病院院長)との題でご講演いただいた。統合失調症患者の平均寿命は健常者に比べ10年以上短く、それも薬を飲んでいない人のほうがさらに短いこと、抗精神病薬服用者は心臓突然死のリスクが高く、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病は心血管系疾患のリスクを増加させること、統合失調症患者の身体リスクを軽減するために栄養指導や運動指導が不可欠であること、薬剤師は抗精神病薬の影響を考慮して処方をチェックし、とくに新規抗精神病薬処方患者の体重、血糖、血圧、脂質異常などをモニタリングして身体リスクをさらに軽減していく必要があることを述べられた。

続いて、最後に「処方薬乱用・依存を防ぐために薬剤師にできること」(座長:坂本隆行先生 三交病院理事長)と題して、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬剤依存研究部部長・松本俊彦先生が講演された。近年の薬物乱用において処方薬の割合が増加しつつある現状をふまえて、その背景の特殊性や問題点について忌憚なく指摘がなされた。そのうえで、解決の糸口として医療者自身が薬物療法に依存していることを改める必要性について、明快なスライドを示しながら説明された。

講演終了後、直ちに閉講式が行われた。日本精神科医学会より受講者代表への受講証書授与、新潟県支部への感謝状が読み上げられた。最後に日精協新潟県支部長・松田ひろし先生より閉講の挨拶があり、2日間の全日程が終了した。

本研修会の報告を終えるにあたり、松田ひろし支部長をはじめ、企画運営された新潟県支部会員の先生方や事務局、関係者の方々に深く感謝を申し上げるとともに、新潟県支部の今後のご発展を祈念申し上げる。
(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会/青木 治亮  吉田 建世)

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