2016年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 栄養士部門

期日/2016年11月24日(木)、25日(金)
会場/ホテルニュータナカ(山口市湯田温泉)

平成28年度日本精神科医学会学術教育研修会栄養士部門は、平成28年11月24日(木)、25日(金)の両日にわたり、日本精神科病院協会山口県支部の担当で「たべることはいきること」をテ-マにホテルニュータナカ(山口市湯田温泉)を会場に開催され、全国各地より約150名の受講生が参加した。

開講式では、日精協山口県支部長の水津信之先生が開講の挨拶をされ、続いて日本精神科医学会・山崎學学会長が挨拶をされた。来賓として山口県知事・村岡嗣政様(代理 山口県健康福祉部理事・岡紳爾様)、山口市長・渡辺純忠様および山口県医師会長・河村泰明様よりそれぞれご祝辞を頂戴した。

第1日目午前の講演1は、会長講演「精神科医療の将来展望」と題して、日精協・山崎學会長が講演をされた。まず最初に、精神保健福祉行政の歩み、精神保健福祉の動向、認知症、精神科医療の将来像等について、詳細に話をされた。今後少子高齢化が進んでいくなかで、2012年に462万人であった認知症患者(約7人に1人)が、団塊の世代が75歳以上となる2025年には約700万人(約5人に1人)となり、認知症の有病率も増加していくことが考えられ、精神科医療においてはBPSDや身体合併症等の適切な対応はもちろんのこと、認知症の初期・軽症から関わることが望ましいと話された。また、社会保障支出と国民負担率の関係において現在のわが国の低負担・中福祉は限界であり、将来どのような選択をしていくのか考えていく必要があると話された。最後に精神科医療の課題として、少子高齢化に向けての診療体制の見直し、対策を考えなければ精神科病院として生き残れないこと、また精神科医療の課題として、うつ病および高齢者精神障害の増加、減らない自殺者数、遅れている発達障害対策(とくに大人の発達障害)、児童精神科医の不足等を示されて講演を終えられた。
次の講演2は、「おこなっていませんか? 誤った衛生管理」と題して、宇部フロンティア大学 人間健康学部看護学科教授・尾家重治先生が講演された。まず、カテキンに抗菌力があるとされ、うがいなどに緑茶を使用することが多いが、水よりもMRSA、緑膿菌などが増殖しやすいため、抗菌効果を期待してうがい等に用いたりするのは望ましくなく、また日本のミネラルウォーターは15品目中1品目以外は安全であるが、欧米のミネラルウォーターは有害物質(アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド)が検出されている等を冒頭で話され、日頃日常の現場において、ごく当たり前のように行われている殺菌・消毒方法の誤った衛生管理について話をされた。伝染病予防法から感染症予防法に代わり、殺菌・消毒方法も大きく変わったが、従来のまま行われている施設が多いようである。すなわち、現在の感染症予防法の下では無用・無効な殺菌・消毒方法が現場で行われているという事例を挙げられて、わかりやすく説明された。各医療機関がいま一度検討し、見直していく必要があると思った。
ランチョンセミナーは、「嚥下困難な高齢者の食事支援~摂食機能障害の着眼点、考え方、およびリハビリテーション~」と題して、日本大学歯学部 摂食療法機能学講座教授・植田耕一郎先生が講演をされた。摂食・嚥下機能を理解する時には5つの段階(先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期)のどこで問題が生じているのかを把握し、それに合った対策を立てることが重要であること、生体防御機能としての唾液の効用や咀嚼誘導食、ナイトミールなどを利用し、その方に合った食事を考えていくことが大切であることなど、非常にわかりやすくお話しされた。
第1日目の午後は、「チーム医療を考える」をテーマにシンポジウムが行われた。まず、8名のシンポジスト(医師の立場から:扶老会病院 理事長・院長 土屋直隆先生、薬剤師の立場から:片倉病院 薬局主任・村田幸子氏、看護師の立場から:田代台病院 看護部長・山本惠子氏、作業療法士の立場から:泉原病院 精神科病棟認知症疾患治療病棟担当・武藤多鶴子氏、精神保健福祉士の立場から:重本病院 退院支援部担当・田村良次氏、臨床心理士の立場から:柳井病院・安田三和子氏、事務の立場から:大田病院 事務長・玉井裕氏、栄養士の立場から:支援センターひえだ 生活支援員・藤中貴子氏)がチーム医療における役割および各医療機関・施設での現状について、各々専門職の立場から話をされた。その後、受講者からの質問等があり活発な意見交換があった。最後に、チーム医療の中で今後栄養士の役割が重要となり、期待していると話され、シンポジウムを終えた。
初日の研修会終了後、同ホテルにおいて引き続き懇親会が開催された。懇親会には山崎会長も参加され、山口県の美味しい海の幸をいただきながら、バイオリン演奏のあと、数々のテレビのクイズ番組に出演されDr.クイズ王として有名な徳山静養院院長・森隆徳先生の演出・司会の下、クイズ番組さながらの山口県クイズ検定が行われ、参加者全員楽しいひと時を過ごし、盛会のうちに終了した。

第2日目の講演3は、「栄養士が知っておきたい精神医学~うつ病の栄養学と脳科学~」と題して、広島大学大学院医歯薬保健学研究院 精神神経医科学教授・山脇成人先生が講演された。うつ病発症には栄養や食生活が大きく関与していることが明らかとなっており、いわゆる地中海式食事がうつ病のリスクを下げること、腸内フローラが今、うつ病関連の研究でもホットな領域として取り上げられていることなどを述べられた。また、うつ病をはじめ精神疾患の診断は主観的で、さまざまな批判もあることから、脳科学を応用したうつ病その他の精神疾患の病態解明が必要と指摘し、現在の脳科学研究のトピックスとして、うつ病の脳機能画像解析や新しい治療となるニューロフィードバックについて紹介された。
研修会最後の講演4は、「口から考える! 栄養マネージメント」と題して、ささお歯科クリニック 口腔機能センター院長・佐々生康宏先生が講演された。摂食・嚥下機能の問題は5つの段階(先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期)に分割して考え、どの段階で支障が出ているのかを明らかにして対応することが大事であるとされた。よく聞く誤った選択法として、ムセたから「きざみ食」または「とろみ食」、歯がなかったから「きざみ食」または「とろみ食」、食べにくそうだったら変更、年齢でなんとなく、時間がかかるようになったから「とろみ食」などが見られると指摘され、このような根拠のないことで決めるのではなく、口の機能を見て食形態を選択することが大事であり、食形態を選ぶ考え方としては、1.咀嚼できるか、2.食塊としてまとめられるか、3.誤嚥するか、といった視点で選択する必要があると話され、これらの判断の視点等、実際の症例のビデオを呈示してわかりやすく説明された。

引き続き閉講式が行われた。日精協から受講者代表への受講証書授与がなされ、さらに日精協山口県支部長・水津信之先生へ感謝状が贈呈された。続いて日精協からの挨拶のあと、日精協山口県支部副支部長・稲野秀先生が閉講の挨拶をされ、2日間の全日程を終了した。
おわりに、本研修会の企画・運営に当たられた水津信之支部長ならびに山口県支部の諸先生、およびスタッフの皆様方に深く感謝申し上げるとともに、山口県支部の今後のご発展をお祈り申し上げたい。
(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修・分科会)

 

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