2016年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 PSW部門

期日/2016年9月29日~30日
会場/宮崎観光ホテル

平成28年度日本精神科医学会学術教育研修会PSW部門は、9月29日、30日の両日にわたり、「地域の・とびら・を開くPSW~鍵となれ~」をテーマに宮崎観光ホテル(宮崎市)にて開催され、全国各地より200名の参加があり盛大に行われた。

開講式では、宮崎県支部長・田中洋先生が開会の挨拶をされ、山崎學学会長の挨拶のあと、来賓として河野俊嗣宮崎県知事よりご祝辞をいただいた。

初日の会長講演は、「精神科医療の将来展望」というテーマで日精協会長・山崎學先生が講演され、日精協宮崎県支部長・田中洋先生が座長を務められた。豊富な統計資料や多様なデータを引用し、諸外国の動向と比較しながら、わが国の精神保健福祉行政の歴史について説明された。また、現在の日本における精神保健福祉の動向について、入院患者数の減少、病床数や平均在院日数の国際比較を交え、認知症患者の増加やBPSD増悪時の精神科医療の必要性、精神科病院以外での身体的拘束の懸念などを示された。最後に、平成30年に予定されている第7期介護保険事業計画、第7次医療法改正について触れ、精神科医療を取り巻く環境の変化が見込まれるなかで、各国の医療・福祉の現状を織り交ぜながら日本での課題を列挙し、今後の日本における医療・福祉のあり方を示唆された。

午後の特別講演Ⅰは「地域の・とびら・を開くPSW」と題して、宮崎県障害児・者そうだんサポートセンターはまゆうコーディネーター・田畑寿明先生が講演され、ブライトハウス住吉施設長・岩下博子先生が座長をされた。はじめに障害者支援の変化とPSWの役割と機能について述べられ、アウトリーチ型相談支援の必要性を強調された。次に障害福祉施策の歴史について、障害者の人権尊重の流れを中心に、障害者権利条約、障害者差別解消法などについて詳細に述べられた。とくに合理的配慮と意思決定支援について多くの例示をされ、ソーシャルワークの意義を説かれた。さらにストレングスについて興味深い多くの例を挙げて説明され、アセスメントでストレングスを見抜く力が必要であると語られた。最後にソーシャルワークにおける相談面接上の重要な心得を教示された。その後のフロアからの質問に対し、黒田官兵衛を例示され「PSWは情報が命」とまとめられたが、受講者には印象深い研修になったと思われた。

次にシンポジウム(緊急特別企画)が「平成28年熊本地震におけるPSWの役割について」のテーマで行われた。座長は宮崎県精神保健福祉士会会長・浅岡悦子先生で、3名のシンポジストと1名の指定発言者が講演された。

最初に高宮病院相談室・濱砂知代先生が「災害派遣精神医療チーム(DPAT)の参加を通して」と題して講演された。まずDPATについて説明されたあと、今回DPATで活動された立場から、益城町での活動内容を詳細に説明され、加えて個別ケースを提示された。

次に阿蘇やまなみ病院総合支援室・永田篤史先生が「被災病院から入院患者の搬送と受け入れ活動を通して」の演題で講演された。前震で被災した他病院からの患者を受け入れた時の状況と、さらに本震で自院が被災したため自院の入院患者を宮崎県下の病院に転院させ、その後転院患者を迎えに行った経験を詳細に報告された。マニュアルが通用せずスタッフの判断と連携が重要なこと、受け入れ側で見えてきた課題と対応が送り出す立場で活かされたこと、外部支援の重要性などが述べられた。

続いて協和病院地域連携室・甲斐周平先生が同じく「被災病院から入院患者の搬送と受け入れ活動を通して」と題して講演された。宮崎県の自院への入院の受け入れから退院までの実際について、具体的に報告された。入院前から情報共有が重要なこと(ファックスが使えずスマートフォン使用)、患者同定への配慮、入院手続き(指定医署名)の課題などについて述べられた。

最後に、指定発言者として厚生労働省委託事業DPAT事務局次長・渡路子先生が「地震発生時からのコメディカル活動とこれからの課題について」と題して講演された。豊富な資料をもとにDPAT 活動について報告され、課題と今後の方針について語られた。急性期支援の大切さとともに、DPATでは中長期までカバーする体制がいると述べられ、現場での判断とネットワークの重要性を強調された。またDPATにおける業務調整員の役割について詳述され、業務調整員はDPAT隊の要であるとまとめられ、PSWへの期待を述べられた。

最後の質疑応答では、他の病院の体験・活動や今後の体制づくりに関することなどホットな話題が出て、シンポジウムは終了した。

研修会1日目の終了後、同ホテルにおいて懇親会が開催された。ジャズ演奏で癒され、宮崎県特産品が景品のじゃんけんゲームで大いに盛り上がり、楽しい交流のひとときを過ごすことができた。

2日目の特別講演Ⅱは「『地域の″とびら″を開くPSW~鍵となれ~』松本ハウストークショー『統合失調症がやってきた』」の演題でサンレボリューション松本ハウス(ハウス加賀谷、松本キック)が講演された。はじめに松本キック氏から、コンビ結成からの歴史が語られ、相方ハウス加賀谷氏の統合失調症の症状増悪による活動休止、相方の回復を10年待ってのコンビ復活、現在の講演活動などについて説明された。続いて軽妙なコントが披露された。次に座談で、松本キック氏が質問しハウス加賀谷氏が回答する形でハウス加賀谷氏の発病から初期の治療の状況、芸人への道とカミングアウト、偏見の問題、服薬コンプライアンス、活動中止中の入院と地域での治療、そしてリカバリーの話をされた。最後にフロアから多くの質問があり、お2人はお笑いを封じて真摯に答えられた。参加者には素晴らしい研修になったと思われる。

2日目のシンポジウムでは「各分野での改革に伴う今後の在り方について」で3名のシンポジストがそれぞれ発表され、日精協宮崎県副支部長・後藤勇先生が座長を務められた。

最初は、日精協医療経済委員会委員・松本善郎先生が発表され、診療報酬上における精神保健福祉士の変遷や通院在宅精神療法・精神科デイケア等・地域移行機能強化病棟について説明された。そのうえで、入院医療から在宅医療の評価へという今後の診療報酬上の方向性を示された。

続いて、聖学院大学人間福祉学科教授・田村綾子先生が発表され、入院中心から地域生活中心へという精神保健福祉施策の変遷を受け、精神保健福祉士の退院支援の効果や実践の検証の必要性、今後の懸念について説明された。そして、精神保健福祉士として、利用者の希望やニーズに寄り添い、法や制度に留まらないソーシャルワークを展開していくことの重要性を述べられた。

最後に、医療機関・施設におけるマイナンバーへの対応として、日精協病院経営管理委員会担当理事・見元伊津子先生が、勤務先でのマイナンバーの取り扱いに関する報告をされた。その中で、住所地が病院や施設になっている場合や判断力が低下している方への対応、取り扱い時に生じるリスクについて説明された。

発表終了後には各シンポジストより、精神保健福祉士は良質な医療・制度の提供の一役を担っており、誠実に熱意をもって取り組んでほしいと貴重なお言葉をいただいた。

閉講式では日精協より受講者代表へ受講証書が授与され、また日精協・宮崎県支部への感謝状贈呈が行われた。続いて日精協からの挨拶のあと、最後に日精協宮崎県支部副支部長・後藤勇先生が閉講の挨拶を行い、2日間の全日程が終了した。

本研修会の報告を終えるにあたり、今回の学術教育研修会を企画運営してくださった田中洋宮崎県支部長をはじめ、日精協・宮崎県支部の諸先生方や関係者の皆様に深く感謝を申し上げるとともに、宮崎県支部の今後のご発展をお祈り申し上げる。
(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会)

このページの先頭へ