2015年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 PSW部門

期日/平成27年10月29日(木)~30日(金)
会場/上田市交流文化芸術センターサントミューゼ(長野県)

平成27年10月29日・30日、長野県の上田市交流文化芸術センター・サントミューゼにて日本精神科医学会学術教育研修会PSW部門が開催された。できたばかりのきれいな素晴らしい会場で、北海道から沖縄までの約150名の参加者があった。

まず開講式が、日本精神科病院協会(日精協)長野県支部長の遠藤謙二先生の挨拶と、日本精神科医学会学会長の山崎學先生の挨拶にて行われた。その後、『精神科医療の将来展望』と題して日精協・山崎學先生の会長講演が行われた。その内容は、・精神保健福祉行政の歩み、・精神保健福祉の動向(データ編)、・認知症、・精神科医療の将来像、として80数枚にも及ぶ多くのパワーポイントスライドを使用しながら、会長の豊富な見識と熱意を込められながら詳細に述べられた。なかでも、精神科医療の中で現在・将来にわたって問題である認知症をとくに取り上げ、新オレンジプランも詳細に説明され、精神科以外での介護施設などにおける身体拘束や虐待の問題についても憂慮すべきことだと強調された。将来像としては、まずはここでも認知症に関連して少子高齢化と2025年問題について述べられ、国土交通省が考えている、株式会社が参入してくる可能性のある「ヘルスケアリート」についても説明された。最後のスライドにて、「精神科医療の課題」として、・精神障害者の地域移行、・高齢精神障害の増加、とくに認知症問題、・うつ病患者の増加、・減らない自死者数(40歳台、50歳台は減少、20歳台、30歳台は増加)、・遅れている発達障害対策、とくに大人の発達障害、過剰診断問題、・児童精神科医の不足(学会専門医174人)、・総合病院精神病床の減少、・遅れている大規模臨床研究、・臨床研修医制度から始まった医局崩壊、指導医不足、・DSM診断によるマニュアル化、分化が進まぬ治療学、・精神科医療における客観的診断法の確立、・精神科地域包括ケアの確立、・税制見直しを含めた社会保障財源の確保、という内容を掲げられ、参加者を激励されて講演は終了した。

昼休みを挟んで、南浜病院の後藤雅博院長による講演・が、『チーム医療におけるPSWの役割』と題して行われた。内容としては、・これまでのPSWとの関わり、・南浜病院での多職種チーム医療とPSWの役割、・包括的治療の中でのPSWに期待されること、・現状と課題、というもので、パワーポイントを使用しながら話を進められた。これまでのご経歴に基づいて、千葉病院、国立療養所犀潟病院(現 国立病院機構さいがた医療センター)、新潟県精神保健福祉センター、新潟大学医学部保健学科、そして現在の南浜病院において、今まで意欲的かつ極めて積極的に関わってこられたPSWの業務や役割などを詳細に説明された。そして現状と課題についても触れられ、課題の解決の1つとして、地域をベースにした医師も入った多職種チームによるケース・マネージング・システムの構築があり、現状としては、心理社会的治療を組み込んだ多職種チームを効果的に動かしていくには、初期からの心理教育を基礎にして家族とのミーティングや地域の保健福祉システムのスタッフ、ケア・マネジャーらとのケア・ミーティングをタイミングよく行っていくことが求められていると述べられた。そして、PSWにはケースマネジャーとして、その中心的な役割が求められていると力強く述べられて、PSWたちへエールを送られた。

その後、参加者は7~8人の16個の小グループに分かれてグループワークを行った。テーマは『PSWのかかわりの視点を再考する』というものだった。各グループは1~2名のファシリテーターが事前に決められており、それ以外のメンバーはいろいろな施設の方々と触れ合ってほしいという事務局の意向に基づき、アットランダムに割り振られていた。実際に行われた内容は、まずはメンバーの中から司会者、記録者、発表者を選出し、最初に氏名、所属、1カ月以内にあった良いことを話してくださいという自己紹介から始められた。そして、後藤先生の講演を聞いて感じたことや日頃感じていること、多職種連携の中でPSW同士でなければわかり合えないことなどについて話し合われた。次に、クライエントに必要な支援を届けるために、関わるうえで大切にしていることについて話し合われた。最後に、グループワークに参加して気づいたこと(関わりの視点を中心にして)について、ディスカッションが行われた。各グループを見て回ったが、どこのグループも意欲的に、活気をもってグループワークが行われていた。その後、全体が集合して、代表して3つのグループの発表があり、われわれ学術研修分科会の2人が総括をして終了した。

研修会1日目の終了後、上田東急REIホテルにおいて懇親会が開催された。真田陣太鼓の演奏と、母袋上田市長も参加されたご当地クイズで大いに盛り上がり、楽しい交流のひとときを過ごすことができた。

2日目の講演・は、『高齢者の生活問題と権利保障』─介護保険制度改革を通して考える─の演題で、長野大学社会福祉学部教授・合津文雄先生が講演された。はじめに日本の人口高齢化の進展と社会保障給付費の増大について解説され、さらに旧措置制度と介護保険制度の基本的仕組みについて対比し、説明された。次に、2000年創設時の介護保険制度の基本理念とその後の4回の介護保険制度改革のポイントと問題点について詳細に述べられた。介護保険制度は、迷走しながら社会福祉の1つの側面「社会の主流の中に存在する広範な一般的・普遍的ニーズを有する人々の生活を支える役割」を担い、運用されてきたが、もう1つの側面「高齢・障害・低所得等に起因する社会的排除を防止し、社会の構成員として包含する役割」(ソーシャルインクルージョン)が大切であると事例を交えて説明された。

講演・は、『老年期精神障害の病態と治療』─在宅医療と地域包括ケアシステムの充実に向けて─と題して、岡谷市民病院院長(前信州大学医学部精神医学講座教授)天野直二先生が講演された。老年期にみられる精神症状の特徴、感覚系の異常に伴う幻覚妄想、晩発性パラフレニーと統合失調症、うつ病と妄想、認知症の中核症状とBPSD、神経変性疾患と精神症状、認知症とうつ病の狭間などのテーマについて格調の高い講義をされた。それぞれの疾患と症状、治療経過について豊富な自験例を提示され、考察も交えられた。老年期精神障害に対し、薬物療法はできるだけ単剤で少量が望まれること、非薬物療法の視点が大切なことを指摘された。また神経症状と精神症状の両面から診る重要性を強調され、天野先生がシニアこころ診療科を開設され、新規患者を神経内科医と協同で診察されていることを紹介された。最後に、地域連携に役割が大きいPSWに対する期待を述べられた。

講演終了後に閉講式が行われ、日本精神科医学会から受講者代表への受講証書授与に引き続き、日精協長野県支部へ感謝状が贈呈された。さらに学術研修分科会構成員が閉講の挨拶をし、最後に長野県支部・轟純一副支部長が閉講の挨拶をされ、2日間の全日程を無事終了した。
おわりに、本研修会の企画・運営に当たられた遠藤謙二支部長ならびに長野県支部の諸先生方、およびスタッフの皆様方に深く感謝申し上げる。

(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会)

このページの先頭へ