2015年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 作業療法士部門

期日/2015年9月3日(木)~4日(金)
会場/ホテルニュー長崎

平成27年度の日本精神科医学会学術教育研修会・作業療法士部門は、「開化~和華蘭(わからん)から学ぶ作業療法実践の6つのヒント~」というテーマのもと、9月3日(木)、4日(金)の2日間、日精協長崎県支部の担当でホテルニュー長崎にて開催され、全国より160名の参加があった。開講式での長崎県支部長・宮原明夫先生と日本精神科医学会学会長・山崎學先生の挨拶に続き、来賓の長崎県知事・中村法道様(代読)、長崎県医師会会長・蒔本恭様からご祝辞をいただいた。

講演Ⅰは「精神科医療の将来の展望」のタイトルで、日精協会長・山崎學先生が以下の4つのテーマについて豊富な統計資料を引用し、わかりやすいグラフも多用して説明された。①「精神保健福祉行政の歩み」:明治7年の医制発布に始まり、ライシャワー事件・クラーク勧告・精神保健福祉法・5疾病5事業までのわが国の精神医療史、②「精神保健福祉の動向(データ編)」:外来・入院別の患者数・疾病別内訳、平均在院日数、年齢分布、精神科医師数の推移、精神科関連医療費など、③「認知症」:認知症の人がどこでどう暮らしているか、新オレンジプランについて、医療が初期・軽症から関わることが望ましいことなど、④「精神科医療の将来像」:人口構成・経済状況・家族のあり方など社会的環境の変化を考慮したうえで、ヘルスケアリート・病院リート・地域医療連携法人制度(仮称)などについての解説。最後に、米国と対比して今後の日本のあるべき医療保健制度を示唆された。

講演Ⅱは、医療法人友愛会 田川診療所院長・田川雅浩先生の座長で、新阿武山病院院長・岡村武彦先生による「精神科医療におけるスポーツの意義について」と題した講演が行われた。(スポーツは)楽しい・回復・レジリエンス・アンチスティグマをkeywordに、現役のサッカー選手としてのノウハウを交えて話された。まず、スポーツに興じること自体が患者に及ぼす効能について医学的見地から説明がなされ、さまざまな種目の中でサッカーが最もその効能が高いことが示唆された。次に、精神障がい者スポーツクラブを立ち上げ、そこで得られた効果や影響について説明がなされ、今後の精神障がい者によるスポーツの展望にも触れられた。

講演Ⅲは、「大人の発達障害と作業療法」と題して長崎大学大学院医歯薬学総合研究科准教授・岩永竜一郎先生が講演された。はじめに発達障害の発生率や診断をされた患者の件数の話をされ、患者が年々増加しており、精神障害者の中にもベースとして発達障害をもった人が多くなっていることを説明された。そしてADHDや自閉スペクトラム障害の方の特徴の話をされ、統合失調症等の精神疾患の症状と類似している点があることを説明された。最後に、発達障害をもつ方の支援については、まずは本人の話をじっくりと聴くことが重要だと述べられた。就職の支援等では、ソーシャルスキルは教えないとわからないと思ったほうがよいと述べられ、日本の文化を知らない外国人に教えるようにそれらを教えることが重要だと説明された。他にも職場の上司の理解が重要であることなども話され、終了した。

1日目の研修会終了後、同ホテル3階「鳳凰閣西の間」にて懇親会が盛大に行われた。アトラクションでは、①オペラ蝶々夫人より、ソプラノ・星野恵利/ピアノ伴奏・石川鮎美両氏の演奏、②日舞藤間流、③龍踊(じゃおどり)が披露された。最後の龍踊には観客も参加して、地元の食材を使った心づくしの料理とともに長崎情緒を堪能させていただいた。

講演Ⅳは、出口病院理事長・出口之先生の座長で、西九州大学・上城憲司准教授による「認知症の人へのリハビリテーション」と題した講演が行われた。今後の在宅介護の方向性を示され、施設の中での作業療法士の役割について概説がなされた。さらに、ご自身が勤務されている病院での院内デイケアの実践例を示しながら、周辺症状(BPSD)の評価と適切な対応について、漫画を用いてわかりやすく説明がなされた。

第2日目の講演Ⅴは、松浦病院理事長・院長烏山昇先生の座長で、「呉秀三とシーボルト」と題して、長崎純心大学・宮坂正英教授が講演をされた。まず、シーボルトが日本で収集し持ち帰った標本がドイツで発見され、今の日本人が知る以上に当時の詳細な日常生活様式が明らかになったとの報告がなされた。次いで、呉秀三先生が精神医学研究の傍らさまざまな評伝をしたため、とくにシーボルトについての評伝については、その研究のスタンダードにもなっている書籍が刊行されていることが説明された。

講演Ⅵは、シンポジウム「これからの作業療法の進むべき道 地域における作業療法の実践」と題して3名のシンポジストの先生方が講演された。
1人目は京都府立洛南病院・岩根達郎先生が「精神科病院に勤務する作業療法士の就労支援」と題し、地元の企業や行政、医療機関等が参加し「障害があっても働きやすいまちづくり」を目指す具体的活動内容(事例検討や情報交換、企業支援や啓発活動など)を説明された。2人目は特定非営利活動法人ちゃんくす理事長・西上忠臣先生による「働くから社会貢献まで 社会参加を応援するちゃんくすの取り組み」で、地元の商店街と連携して調査事業をされたり、企業の障害者雇用にアドバイスをされていることなどを説明された。最後は特定非営利活動法人いねいぶる・宮崎宏興先生が「社会的包摂と作業療法」という題で、いねいぶるの活動について話された。地域ごとの個別的な課題に応じた取り組みが必要なことや、個人のニーズと地域のニーズをつないでいく役割を担うことの重要性を説明された。発言後の討論ではフロアから3件質問があり、活発な議論がなされた。

講演終了後、直ちに閉講式が行われた。日精協より受講者代表への受講証書授与、長崎県支部への感謝状が読み上げられた。最後に日精協長崎県支部長・宮原明夫先生より閉講の挨拶があり、2日間の全日程が終了した。

本研修会の報告を終えるに当たり、宮原明夫支部長をはじめ、企画・運営された長崎県支部会員病院の先生方および関係者の方々に対し、深く感謝申し上げるとともに、長崎県支部の今後の発展をお祈り申し上げます。

(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会/青木 治亮、稲野 秀)

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