2014年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 PSW部門

期日/2014年11月13日(木)~14日(金)
会場/ホテルグランヴィア岡山

平成26年度の日本精神科医学会学術教育研修会PSW部門は,平成26年11月13日(木),14日(金)の両日にわたり,日本精神科病院協会岡山県支部 の担当で「PSWへの期待 PSWの可能性 ~志への原点回帰~」をテーマにホテルグランヴィア岡山にて開催され,全国各地より160名の受講生が参加し た。
 開講式では,日精協岡山県支部長の堀井茂男先生が開講の挨拶をされ,続いて日精協・山崎學会長が挨拶をされた。
  第1日目の午前は,会長講演「精神科医療の将来展望」と題して,山崎學会長が講演をされた。まず最初に,山崎会長の精神科医の原点は,「幼い頃,自病院の 入院患者にいろいろと可愛がられ,医師になった時に身近なところにいる人に喜んでもらったことが始まりである」と話された。次に,数多くのスライドを提示 しながら,精神保健福祉行政の歩み,精神保健福祉の動向,認知症,精神科医療の将来像について,詳細に話をされた。その中で,認知症対策に関しては,平成 26年11月6日に東京で「認知症サミット」が開催され,そこで安倍首相が「現在進めているオレンジプランを見直し,平成27年度より新しいオレンジプラ ンを策定していく」と話されたとのことで,日精協も今後関わりをもって,実行的なプランをつくり上げていくと言われた。最後に,高齢化社会における認知症 患者の精神科医療モデルを確立していくこと,これから進んでいく地域包括支援モデルに向けて,いろいろなアンテナを地域に伸ばす必要があること,少子化に よる医療従事者の確保が困難となるために,病床削減,施設化,外国人労働者の雇用等を検討していくことの必要性を説明された。
 昼休みには,ランチョンセミナーで「医療機関における就労支援IPS」と題して,桜ヶ丘記念病院精神保健福祉士 中原さとみ先生が講演をされた。
  午後の特別講演は,「平成26年度診療報酬改定から考えられる今後の精神科医療」と題して,桶狭間病院藤田こころケアセンター 院長・藤田潔先生が講演さ れた。平成26年4月に診療報酬改定があり,精神科においてもさまざまな新規項目が追加されたが,多くは要件が厳しく,算定ができる医療機関が少ないのが 現状である。しかし,内容的には急性期医療への評価,多職種連携によるクリニカルパスを用いた医療提供等,国が考えている精神科医療の方向性は正しいと評 価された。さらに,平成26年7月1日に示された「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」において,早期退院に向けての取り組 みや連携におけるPSWの存在は大きく,さらなる活躍を期待すると話された。
 続いてのプログラムは,2つのグループに分かれてのグループワークが企画された。
  企画1ではマインドマップを活用した「見える事例検討会○」(グループワーク)が,公益社団法人 地域医療振興協会 伊東市民病院 臨床研修センター長/ 医師の八森淳先生と,株式会社エイチ・ツー・オー綜合研究所 地域連携室 チーフインストラクター 社会福祉士の大友路子先生の指導のもと行われた。ちょ うど平成26年11月10日のNHKの「クローズアップ現代」に取り上げられたこともあって,興味・関心を示していた受講者が多くいた。「見える事例検討 会○」は,事例の根底にある課題を明らかにし,支援の方向性を見出し(課題解決),参加している支援者の包括的視点からの援助技術を高め(援助技術の向 上),実際に地域で動ける多職種による支援者ネットワークを構築する(ネットワーク構築)ことを目的としている。今回は,「自分でできる。家で暮らした い」と希望している83歳の独居生活をしている女性の事例に関して,両先生が独自に開発した「見え検マップ○」を活用して,1グループ4~5名で15グ ループに分かれ,ワールドカフェのような形でさまざまな意見(アイデア)を出しあった。事例が可視化され,全体像を捉えることができ,困難な事例でも1つ の方向性が見出せるように思えた。
 企画2ではWRAP(グループワー ク)が行われた。WRAPには“元気回復行動プラン”の訳が当てられる。講師は,「らっぴーちおかやま」という岡山県を中心にWRAPの良さを広める活動 をしているグループである。このメンバーが,司会とグループワーク9テーブルそれぞれのファシリテーターを担当した。参加者が与えられた課題に対し,テー ブル内で話し合いながら模造紙に回答を書いていくという形で進行した。課題として「大切にされていると感じる時は?」「元気に役立つ道具箱を作ろう」「ど んな時に希望を感じるか?」「調子を崩す引き金と行動プランは?」「これまで良かったサポートと,これからしてほしいサポートは?」などと続き,途中に大 交流という他のテーブルの発表に自由にコメントを張る時間が設けられた。研修の最後には「あなたのWRAPを作れる人はただ一人,あなただけです」とコメ ントされた。WRAPは当事者支援の1つの手法であるが,このグループワークの参加者は研修後,元気になったように見受けられた。
  初日の研修会終了後,同ホテルにおいて引き続き懇親会が開催された。懇親会には山崎会長も参加され,アトラクションではテレビ番組にも出演されている,ち くわ笛で全国的にも有名な「桃太郎のからくり博物館」(倉敷市)館長の住宅正人様が岡山県産のちくわ笛で数曲の演奏をされ,参加者全員がそのすばらしい “音色”に魅了され,盛会のうちに終了した。
 第2日目の講演は「本人と 支援者の相互エンパワーメントの展開」の演題で,特定非営利活動法人おおさか地域生活支援ネットワーク理事長の北野誠一先生が話された。先生は豊富な資料 を用意され,その中からご自身の体験を交えながら重点事項を説明された。障害者本人のもっている力を発揮するために,阻害的関係因子を促進的関係因子に変 えていくのがPSWのあるべき姿であると話された。エンパワーメント支援について,障害者のその人らしさを否定しないことが重要であり,PSWは本人が意 思を表明できるように支援していくべきであると話された。エンパワーメント(自分らしく共に生きる価値と力を高めること)について具体例を挙げて説明され た。グループホームに反対運動をしていた人たちが見学などを通して,よき理解者として支援者になった話など,演題に関わる具体例が提示されたが,ここでも PSWの役割の重要性を強調された。講演を通じて,参加者は支援とは何かを考えることができ,PSWのやりがいを感じたのではなかろうか。
  次に,特別企画として「リカバリー 当事者の力を信じ,力を発揮できる場~自信を取り戻す活動を通して~」と題して,クローバー語りと映画「ありがとう」 上映会が行われた。クローバーとは,ピアサポーターグループの名称である。このメンバーが自己紹介しながら,クローバーの活動内容を紹介された。相談活 動,ピアガイド,家事活動,交流スペースの運営,退院支援活動,講演活動などの幅広い活動の中から映画づくりの話が生まれたという。映画「ありがとう」は 当事者とその周りの人々が出演し,インタビューに答える形で話が進んだ。心の病と向き合い,ひたむきに人生を生きている4人の主人公が,「ありがとう」を きっかけに未来へと輝いていくという内容の映画であった。上映後,出演した当事者2人との質疑応答があり,「映画に出て自信がついた」「次回作も見てくだ さい」の言葉が聞かれた。参加者はリカバリーの実際についてのよい研修ができたと思われる。
 引き続き,閉講式が行われた。日精協から受講者代表への受講証書授与がなされ,さらに日精協岡山県支部長・堀井茂男先生へ感謝状が贈呈された。続いて日精協からの挨拶のあと,日精協岡山県支部理事・原田俊樹先生が閉講挨拶をされ,2日間の全日程を終了した。
 おわりに,本研修会の企画・運営に当たられた堀井茂男支部長ならびに岡山県支部の諸先生,およびスタッフの皆様方に深く感謝申し上げるとともに,岡山県支部の今後のご発展をお祈り申し上げたい。
(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会/炭谷 信行  西紋 孝一)

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