2014年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 栄養士部門

期日/2014年 9月25日・26日
会場/ビーコン・プラザ(別府国際コンベンションセンター)

平成26年度の日本精神科医学会学術教育研修会栄養士部門は,平成26年 9月25日(木),26日(金)の両日にわたり,日本精神科病院協会大分県支部の担当でビーコン・プラザ(別府国際コンベンションセンター)にて開催され た。「精神科医療において栄養士の役割を高める」をメインテーマに,全国から170名を超える参加があり,盛大に行われた。

 開講式は日精協大分県支部長・山本紘世先生の開会の挨拶に続き,日本精神科医学会・山崎 學学会長が挨拶をされた。その後,来賓として大分県知事代理の大分県福祉保健部部長・平原健史様と,別府市医師会の河野幸治会長が祝辞を述べられた。

 第1日目の午前は特別講演として「精神科医療の将来展望」の演題で,山崎  學学会長が講演された。先生は,①精神保健福祉行政の歩み,②精神保健福祉の動向,③認知症,④平成26年度診療報酬改定,⑤精神科医療の将来像,の順 で話を進められ,最後に,「1,205会員病院がそれぞれの地域特性を考えて経営戦略を立てる必要性がある。今までの統合失調症モデルでの病院経営は一部 の急性期に特化できる病院を除くと難しくなる。大規模,中規模,小規模病院それぞれの選択肢が限定される。高齢社会における認知症患者の精神科医療モデル を確立することが鍵になる。これから進んでいく地域包括支援モデルに向けていろいろなアンテナを地域に伸ばすことが必要。少子化により医療従事者の確保が ますます困難となる」とまとめられた。講演内容は極めて多岐にわたり,最後は駆け足となったが,山崎 學学会長の考えが参加者に十分伝わってくる,非常に 意義深い講演であった。
 ランチョンセミナーを 挟んで,午後は最初に「食・栄養と精神疾患」の演題で大分大学医学部精神神経医学講座教授の寺尾 岳先生が講演された。先生は,オメガ3不飽和脂肪酸とう つ,低コレステロールとうつ,ビタミンとうつ,水道水リチウムと自殺,の順でこれまでの研究データなどをもとに詳細に説明され,うつや自殺を予防するに は,EPAを上げるために青魚をしっかり摂取し,コレステロールが下がりすぎないようにダイエットもやりすぎず,ビタミンB12や葉酸が不足しないように 緑黄色野菜や貝類を食べ,値段の高いミネラルウォーターなど飲まずに,リチウムを含む水道水を飲むことが大事である,とまとめられた。最後にご自身の趣味 である油画を披露されたこともあり,なごやかな雰囲気で講演は終了した。
 次のシンポジウムは,今回の研修会のメインテーマである「精神科医療において栄養士の役割を高める」をテーマに4名の先生が講演された。

1)栄養計画・栄養指導について(専門性):曽我病院 西宮弘之先生
2)NST活動の実際(感染・褥瘡・チーム医療):鶴見台病院 佐藤弓子先生
3)外来・デイケア・訪問看護での栄養指導(地域生活支援):弘前愛成会病院 石岡拓得先生
4)管理栄養士の役割と日精協認定栄養士:緑ヶ丘保養園 渕野勝弘先生

 西宮先生は管理栄養士という専門職として,食事改善提案などといった管理 栄養士にしかできないことについて,佐藤先生は病院内での褥瘡対策や医療安全,感染症対策における管理栄養士の役割について,石岡先生は外来,デイケア, 訪問看護の場面における管理栄養士の役割について講演された。また,渕野先生は日精協常務理事の立場から,日精協の組織や日本精神科医学会について説明さ れるとともに,診療報酬における管理栄養士の役割などについて講演された。いずれの先生の講演も先生方の実践経験に基づく内容であり,非常に有意義であっ た。
  第1日目の最後は文化講演として「50℃洗い,70℃蒸し~美味しい調理を目指して低温スチーミング~」の演題で,スチーミング調理技術研究会会長の平山 一政先生が講演された。地元別府市出身である先生は,50℃洗い,50℃づけ,70℃蒸しの普及のため,全国各地で講演会を行うほか,テレビ,ラジオ,雑 誌,新聞等のメディアでも幅広く活躍されている。先生は実際の器具も用いて,調理における50℃洗いや70℃蒸しの効能などについて種々説明されたあと, 「50℃洗いと70℃蒸し(低温蒸し)は食材を最も美味しく調理する方法として生まれました。日本で生まれ,世界に広がりつつあります。日本人はもっと多 く野菜を食べるべきです。子どもたちに野菜を美味しく食べさせましょう。健康生活のためには「食のあり方」を考えましょう。50℃洗いをまず家庭で始めて みませんか」とまとめられた。

 第1日目の研修会終了後,同会場で懇親会が催された。懇親会では地元大分の郷土料理がテーブルに並ぶとともに,アトラクションとして,乾杯前には世界大会4連覇の日本文理大学のチアリーディング部の演技,会食中にはベリーダンスの披露もあり,大変盛り上がった。

 第2日目は講演2題が行われた。最初の講演は, 「精神科病院での院内感染対策~栄養士に知っておいて欲しい要点~」と題して,佐伯保養院副院長の山内勇人先生が講演された。インフルエンザ,ノロウイル スに対する感染対策をユーモアを交えて,受講生をステージに引き込むような講演であった。ウイルスがそこに見えるかのようにして危険を予知し回避する必要 性と,職員や患者さんの爪の間や,職員が持っている出入口の鍵も病原菌を媒介すること,部屋を清潔にするはずの清掃がかえって感染を広げる場合があること など,普段見落としがちな点を指摘して注意を促した。
  本研修会最後の講演は,新潟医療福祉大学の稲村雪子先生により行われた。「肥満の栄養指導での認知療法・行動療法的アプローチと増加する痩せの栄養管理」 と題して,肥満の症例に対して行動療法的アプローチを施し,その治療成果を段階的にわかりやすく解説された。とくに,患者さんが1つの到達目標に達したと きにその達成を「ほめる」大切さを強調された。また,肥満の問題ばかりではなく,統合失調症患者の痩せの問題の原因追及にも取り組んでおられ,その研究を 紹介された。管理栄養士はヘルスプロフェッショナルとしての自覚をもって医療に貢献するのだという信念をもたなければいけないという先生の考えがひしひし と伝わってくる講演であった。
 講演終了後,直ちに閉講式が行われた。来年度の栄養士部門研修会開催地,福井県から参加された受講生に代表として修了証書が授与され,大分県支部長の山本紘世先生に日精協より感謝状が贈られた。
 特別講演1題,文化講演1題,講演3題,研修テーマに基づいたシンポジウムで構成された本研修会は,学会業者を入れない大分県支部の手づくりの研修会とのことであるが,その進行や構成は工夫され,充実した暖かい研修会であった。
 山本紘世支部長先生をはじめ,実行委員長の向笠浩貴先生,大分県精神科病院協会の先生方,栄養士部会および事務局の皆様に感謝いたします。
(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会)

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