2014年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 作業療法士部門

期日/2014年7月3日(木)・4日(金)
会場/ホテル日航那覇グランドキャッスル(沖縄県)

日本精神科医学会学術教育研修会作業療法士部門は、平成26年7月3日 (木)・4日(金)の2日間、全国から172名の参加者を得て沖縄県のホテル日航那覇グランドキャッスルにて開催された。開講式は、日精協沖縄県支部長・ 小渡敬先生による開講の挨拶、続いて日精協・山崎學会長が主催者としての挨拶をされた。さらに来賓として沖縄県保健医療部参事の阿部義則様と沖縄県医師会 副会長の玉城信光様から祝辞をいただいた。


  第1日目の講演Ⅰは、山崎學会長より『精神科医療の将来展望』と題し、ご講演いただいた。①精神保健福祉行政の歩みについては、これまでの歴史を詳しく、 かつわかりやすく説明され、②精神保健福祉の動向は、最新のデータ分析に基づき、日本の精神医療の素晴らしさ、統計の違いによるWHOの誤解などを話さ れ、問題提起をされた。③認知症では、BPSDは精神科こそが診るべきもので、いまだに多くの課題も残っていること、④精神科医療の将来像では、地域移行 などの行政の指針を捉えて、その方向性が示された。
  講演Ⅱは、沖縄県立総合精神保健福祉センター所長の仲本晴男先生により、『うつ病デイケアにおける認知行動療法と作業療法の役割』と題しての講演が行われ た。うつ病デイケアにおいて、作業療法は認知行動療法とともに車の両輪である。作業療法は創造性を刺激し充実感をもたせるので、急性期を脱したうつ病の意 欲を高め、回復と活性化に重要である。また、運動神経系の賦活や対人関係の再学習など広範な有用性が認められ、認知行動療法を実践しやすくする効果があ る。それらのことを実際の活動で紹介され説明された。


  昼食後の講演Ⅲは、九州保健福祉大学作業療法学科教授・小川敬之先生による『認知症のリハビリテーション(作業療法の視点)』と題しての講演が行われた。 認知症の理解を深める視点として次の3つを挙げられた。①科学的根拠に基づいた医療:すなわち器質的障害の理解、②物語と対話に基づく医療:つまり個人の 生活史や考え方を理解すること、③環境要因を考えた医療:人的・物理的環境がその人に及ぼす影響を考えることが重要である。そのことをご自分の臨床上の事 例を通し、わかりやすく説明された。認知症患者個人々々に合った対応が必要なことを学んだ。


  講演Ⅳは、『統合失調症の回復とは?』と題して、オリブ山病院副院長の横田泉先生にご講演いただいた。お笑いコンビ「松本ハウス」の『統合失調症がやって きた』という著書を紹介され、統合失調症であるハウス加賀谷さんを例として、『統合失調症は、人間的なやまいである』ということを主題とし、急性期の患者 への対応、臨界期、寛解前期、寛解後期、回復などについて説明をされた。また別の2症例を紹介し、『人間的なやまい』であるのは、①孤独・孤立の状態で発 病・悪化する、②人の対応次第で回復もすれば悪化もする、③急性期から慢性期までがあてはまる、④人間的エピソードがきっかけで慢性期から回復となる、⑤ 人柄が平和主義・平等主義である、といったことが説明された。


  その後、懇親会が同ホテルで行われ、まずは沖縄で結婚式などのおめでたい席で踊られる『かぎやで風』という沖縄舞踊が披露された。次の『絶対王者』の踊る エイサーは、非常に勇壮で感動的なものであった。琉球料理に泡盛に踊りと堪能させていただき、参加者同士の懇親も進み、有意義な会だった。


  2日目は、講演Ⅴ『精神科作業療法のこれから~急性期から慢性期リハビリテーションの確立に向けて~』と題して、地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県 立精神医療センター社会生活支援部 訪問看護ステーション長の香山明美先生にご講演いただいた。グローバルな視点に立っての作業療法の定義、精神科作業療 法の現状、作業療法の目的などについてお話しされた。また、「急性期・病棟内プログラム~訪問作業療法まで」という内容にも触れられ、急性期リハビリテー ションの重要性について力説された。家族支援、退院前訪問における作業療法士の役割、個別支援の大切さも語られ、最後に震災から学んだことと、これからの 多職種チームの必要性を説かれて講演を結ばれた。


  最後の講演Ⅵは、佛教大学保健医療技術学部作業療法学科 准教授の苅山和生先生による『精神障害者の身体健康面の特徴とその対応』であった。まずは、自己 紹介を兼ねた患者さんとの関わりに関するスライドからスタートされた。講演の内容として、①健康の捉え方の共有から、②精神障害者の身体健康面、③技術的 なヒント~精神障害者に対するICFからのOT評価と働きかけ、④これからの精神科作業療法が向かうところを述べられた。講演の中で『人の行動こそが活動 の源』と言われ、「人とは、行えば強くなる。しなければ弱くなる。負担が多すぎるとつぶれる。負担がなさすぎると退化する。課題が小さすぎるとあなどる。 課題が大きすぎるとあきらめる。負担や課題が個人に対し適度であるとき、人は進歩し元気になる。看護や介護は『おもてなし』的だが、作業療法は『おもてな し』ではない」と言われたのが印象的だった。


 最後に閉講式が行われ、日本精神科医学会長の山崎學先生より、受講生代表に受講証が授与され、日精協沖縄支部の小渡敬支部長に感謝状が贈られた。そして、山崎學会長の総評と小渡支部長の閉会挨拶で、2日間の研修会は閉講となった。
(日本精神科医学会 学術教育推進制度学術研修分科会)

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