2012年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 作業療法士部門

期日/2012年9月27日(木)・28日(金)
会場/名鉄グランドホテル(愛知県)

  平成24年度の日精協学術教育研修会作業療法士部門は、平成 24年9月27日(木)、28日(金)の両日にわたり、日精協愛知県支部の担当で名鉄グランドホテル(名古屋市)にて開催された。「精神科OT〜私たちに できること」のテーマのもと、全国から215名の参加があり、盛大に行われた。
 
 開講式は、愛知県精神科病院協会副会長・重冨亮先生の司会で進行した。日精協愛知県支部長・森隆夫先生の開講の挨拶に続き、日精協・山崎學会長が挨拶を された。その後、来賓として愛知県知事代理の愛知県健康福祉部健康担当局・近藤則和次長と、名古屋市長代理の名古屋市健康福祉局障害福祉部・西山麻由美部 長が祝辞を述べられた。
 
 第1日目の講演Ⅰは、「精神科医療の将来の展望」の演題で山崎學会長が講演された。はじめに、精神保健福祉行政の歩みと精神保健福祉の動向について豊富 な資料をもとに詳しく説明され、現在ある問題点について歴史的に展望された。次に精神障害者の地域移行について話され、今後の方向性についても触れられ た。さらに認知症についても述べられ、その行動・心理症状(BPSD)には精神科医療による対応が必要であることを強調された。また、精神科医療の将来像 と日精協の描く精神医療の将来ビジョンについても語られ、チェックアンドバランスの考え方で被害者を出さないような精神科医療の改革が必要であると締めく くられた。
 
 次のワークショップは、「グループをウォーミングアップする」の演題で近森病院第二分院作業療法室室長・山内学先生が担当された。会場には前もって14 名分ほどのいすが1グループを作るように円く設営され、受講者は15グループに分けられた。はじめにグループの概念と基本、治療的意義、進め方などについ て質疑応答の形での講義があり、続いて実践となった。一見するといす取りゲームのように見えたが、実はウォーミングアップの模擬であり、ゲームをしながら 個人あるいは集団のアセスメントを行いながら、お互いの理解を深めるためとのことであった。山内先生は、良いグループ体験でその人の対人関係が変わってき て、治療者がいなくても人との関係性を作ることができる、とコメントされた。
 
 午後は1時40分から3時10分まで分科会Ⅰ-①と②、3時30分から5時まで分科会Ⅱ-①と②が行われた。それぞれの演題と担当講師、および講師の先生が今回の研修会で最も伝えたい要旨は以下の通りである。
 
〈分科会Ⅰ-①〉
 演題:ひとは作業で元気になれるか 暮らしに向き合うために〜生活行為向上 生活機能改善をめざす工夫と課題〜
 講師:介護老人保健施設涼風苑リハビリテーション室室長 浅野有子先生
 コメント:人は作業することを通して元気になるが、その源流は個々によって違うため、それぞれに合う作業療法を作り出し、多様な人々が共生できる状況を作りたい。
 
〈分科会Ⅰ-②〉
 演題:精神科デイケア実践論〜旅は道連れ 世は情け〜
 講師:浅香山病院A館デイケア 山崎勢津子先生
 コメント:精神科デイケアは集団で生きた作業療法ができる場であるが、患者個々人に焦点を当てて支援をしていく場でもある。
 
〈分科会Ⅱ-①〉
 演題:復職支援における作業療法の実際
 講師:中部大学生命健康科学部作業療法学科教授向 文緒先生
 コメント:復職支援に作業療法が関わる意義は、科学的視点と人文学的視点の両面からアプローチできることである。作業療法士は復職支援において非常に役立つ存在であり、自信を持って参加してほしい。
 
〈分科会Ⅱ-②〉
 演題:認知症における作業療法〜活動・集団・治療的自己の活用 あなたは使いこなしていますか?〜
 講師:日本福祉大学健康科学部リハビリテーション学科作業療法学専攻助教 
    来島修志先生
 コメント:認知症の方に対する作業療法の一番のポイントは、「ともに楽しむ」「教えてもらい、感謝する」という役割を演じる(治療的自己の活用)ことである。
 
 第1日目の研修会終了後、懇親会が催された。この懇親会には愛知県知事・大村秀章氏も参加され、名古屋名物の天むす、手羽先、きしめん、味噌カツがテー ブルに並んだ。各作業療法士が創意工夫し、普段実践しているゲーム等も披露され、知事も時間の許す限り参加されていた。各作業療法士の不断の努力の一端が 垣間みられ、非常に有意義なひとときであった。
 
 第2日目の講演Ⅱは、「精神科OTのための人間作業モデル」と題し、首都大学東京健康福祉学部作業療法学科教授・石井良和先生が講演された。まずは作業 療法の歴史をひもとかれ、人間作業モデルの位置づけをされたあと、人間作業モデルについて、関連用語を説明しながら、その概念について詳しく解説された。 石井先生は、「人間作業モデルは、初め解りにくいが、この図が理解できれば解る」とされ、MOHO第3版および第4版の代表的な図を紹介された。これによ ると、個人的資質(意志、習慣化、遂行能力)と環境(社会的、物理的)が行為(作業参加、作業遂行、作業技能)に関与し、作業適応(作業同一性、作業有能 性)に反映されるという。最後に事例を紹介され、実践的解説をされた。
 
 講演Ⅲは、「いま精神科作業療法に求めること、できること」の演題で、名古屋大学大学院医学系研究科作業療法分野教授・鈴木國文先生が講演された。鈴木 先生は講演内容を、1)リハビリテーションということば、リハビリテーションと医療、2)統合失調症のリハビリテーションの現状、求められること、3)精 神科リハビリテーションと国の政策、4)精神科リハビリテーションのこれから、OTに求められること、の4項目に分類したうえで、リハビリテーションとい う言葉の語源に始まり、それぞれについて詳細かつわかりやすく説明された。そして最後に、「精神科作業療法士は生活障害という側面を、医療の内と外を移動 しながら、専門性にのっとってみることのできる唯一の職種である。それをいかし、現在世界のなかでも有数のマンパワーを擁している日本の精神科作業療法士 の力を十分にいかしきる(実際の効力を出す)ように努力していきたい」とまとめられて講演を終えられた。
 
 講演終了後には閉講式が行われ、日精協から受講者代表への受講証書授与に引き続き、日精協愛知県支部へ感謝状が贈呈された。最後に愛知県精神科病院協会会長・舟橋利彦先生が閉講の挨拶をされ、2日間の全日程を無事終了した。
 
 おわりに、本研修会の企画、運営に当たられた森隆夫愛知県支部長ならびに愛知県支部の諸先生方およびスタッフの皆様方のお心配り、ご努力に深く感謝申し上げるとともに、愛知県支部の今後のご発展をお祈り申し上げる。

(学術教育推進制度学術研修分科会/ 炭谷 信行  山口 哲顕)

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