2012年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 栄養士部門

期日/2012年10月25日(木)・26日(金)
会場/ベルクラシック甲府(山梨県)

 平成24年度の日精協学術教育研修会栄養士部門は、平成24年10月 25日(木)、26日(金)の両日にわたり、日精協山梨県支部のご担当により、ベル クラシック甲府(甲府市)にて開催された。「食べる事の意味を考える~精神科栄養士、求められる明日~」としたテーマのもと、全国から178名の参加があ り、盛大に行われた。
 
 開講式では、日精協山梨県支部長・山角駿先生の開会挨拶に引き続いて、日精協・山崎學会長が挨拶をされ、来賓挨拶として山梨県福祉保健部・三枝幹男部長が祝辞を述べられた。
 
 第1日目の特別公演では、「精神科医療の将来の展望」との演題で山崎學会長がご講演された。はじめに、精神科保健福祉行政の歩みと精神福祉の動向につい て、豊富な資料をもとにスライドを使いながら具体的に詳しく説明された。さらに認知症についても述べられ、BPSDには精神科医療による対応が必要である ことを強調された。最後に、精神科医療の将来像と日精協の描くそれについて語られ、国策に対して意見を述べられたと同時に、われわれ精神科医療の未熟さも 反省し、研修の大切さを述べられた。チェックアンドバランスで被害者を出さないような精神科医療の改革が必要であると締めくくられた。
 
 ランチョンセミナーでは、「日精協認定栄養士に期待すること」と題して、日精協認定栄養士分科会構成員・(財)積善会曽我病院栄養科長・西宮弘之先生 (座長:峡西病院院長・浅川理先生)よりお話しいただき、認定栄養士制度の実際の認定への流れや今後の認定栄養士への期待が述べられた。認定栄養士を取得 することで栄養士の養成機関では学ぶ機会のない精神科医療の基礎を学び、これからの実践を通じてさらに患者のことを知り、入院・療養生活のなかで患者の栄 養状態の改善とQOLを向上できるよう、資格をいかしてほしいとのお話があった。
 
 午後の最初の講演では、「人間栄養学に基づいた栄養管理」と題して、山梨学院大学健康栄養学部准教授・影山光代先生(座長:HANAZONOホスピタル 理事長・山角駿先生)が講演された。うつ病との関連が示唆されている栄養素として、①葉酸、②n‐3系脂肪酸、③Vit C・D・Eについての研究結果の説明があった。また、うつ病患者のリワークのために調理実習は効果的なリハビリであり、段取り力やコミュニケーション力、 時間管理力などを必要とする調理作業そのものが、脳の前頭前野の活性化を誘起する可能性が示唆されているとのお話があった。
 
 午後のシンポジウムでは、「精神科栄養士、求められる明日」をテーマに、常磐大学人間科学部健康栄養学科専任講師・寒河江豊昭先生の座長のもと、4人の シンポジストを招いて行われた。多職種によるチーム医療が推進されるなか、栄養業務に対する理解度を確認するため、山梨県精神科病院協会加盟全病院の医師 や栄養委員会所属の看護師、PSWを対象に行われた食事療養理解度アンケート調査の分析をもとに、日下部記念病院院長・久保田正春先生、HANAZONO ホスピタル副師長・大石正次先生、山梨厚生病院医療福祉相談センター副所長・水上みや子先生、山梨県栄養士会会長/山梨学院短期大学食物栄養科教授・田草 川憲男先生らによるディスカッションが行われた。途中、会場からの質疑を通して、栄養士の立場で震災支援に行かれた体験報告や、被災病院となった病院栄養 士からの実情や今後の課題などの報告があり、貴重な意見交換の場面もあった。最後に、アンケート結果における食事箋に対する理解度の低さについて、栄養士 の立場から田草川先生が研修会場に集まった栄養士らに、栄養士から努力していくよう奮起を促された。
 
 初日最後の文化講演では、「調和を求めて」と題して、絵本作家であり絵本翻訳家でもあられる甲州市立塩山図書館分館甘草屋敷子ども図書館名誉館長・みら いなな先生(座長:日下部記念病院理事長・中澤良英先生)からご講演いただいた。代表作であるミリオンセラーとなった『葉っぱのフレディ』との出会い、そ して、先生が山梨の自然のなかに暮らし始めて四半世紀、その間にめまぐるしく起きた貴重な体験談についてお聞きすることができた。
 
 初日の研修会終了後には懇親会が行われ、アトラクションで地元山梨を中心として活躍するヴァイオリンとギターのデュオ〈NYT〉によるオープニングアク ト、会場が1つになった〈よっちゃばれ踊り〉、山梨の名産品である印伝を懸けた〈じゃんけんゲーム〉などで盛り上がり、山梨の味と技を楽しみながら親睦を 深めることができた。
 
 第2日目の講演は、「栄養指導のための良好なコミュニケーション」と題して、(株)チーム医療代表取締役・梅本和比己様(座長:山梨厚生病院精神科診療 部長・佐藤佳夫先生)が講演された。まず、NLP(神経言語プログラム)をメタファーで体験し、イメージは脳をその気にさせる力があり、できることをイ メージすることによりできるようになるということを確認した。また、栄養指導・教育を成功させるために必要なコミュニケーション技法として、クライアント との信頼関係を形成するための「傾聴する」「質問する」「伝える」スキルとエンパワーメントについて、事例や実技を通してわかりやすく説明していただい た。援助者の価値観で行動変容を促すのではなく、問題を抱えるクライアント自身が問題を解決できるよう、動機づけや価値観への内省と気づきを促し、自己判 断できるようサポートすること、相手を肯定的にとらえ、プロセスを評価し、よいところは褒め、ともに喜ぶこと、困難事例であるほど信頼関係が大事であるこ となどをお話しいただいた。
 
 研修会最後は、「向精神薬の副作用が関与する食事への影響」と題して、東邦大学薬学部臨床薬学研究室教授/精神科専門薬剤師・吉尾隆先生(座長:住吉病 院院長・中谷真樹先生)が講演され、①向精神薬と食事の関係について、②身体合併症と向精神薬の副作用との深い関係について、③向精神薬使用患者の栄養管 理の重要性についてお話しされた。抗精神病薬の服用により、嚥下反射や咳反射のきっかけとなる物質であるドパミンとサブスタンスPが低下し、誤嚥性肺炎発 症のリスクが高まること、抗精神病薬の受容体特性に起因する副作用が身体合併症の原因となり、それらに加えて偏った食生活や生活習慣、経済的困窮、セルフ ケアの不足、コンプライアンスの悪さが死亡のリスクを高めること、患者の生命予後に栄養状態や体重の管理が重要であることをお話しいただいた。
 
 講演終了後、正午から閉講式が行われた。日精協より受講者代表への受講証授与に引き続き、日精協山梨県支部長・山角駿先生へ感謝状が贈呈された。最後に、日精協山梨県支部代議員・山崎達二先生による閉講の挨拶があり、2日間の全日程が終了した。
 
 本研修会の報告を終えるに当たり、山角駿支部長をはじめ、企画運営された山梨県支部会員先生方や事務局、関係者の方々からの数々のお心遣いに深く感謝申し上げるとともに、山梨県支部の今後のご発展をお祈り申し上げたい。

(学術教育推進機構・学術研修委員会 / 安藤 琢弥  坂本 隆行 )

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