2011年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 事務部門

期日/2011年11月10日(木)・11日(金)
会場/新潟グランドホテル(新潟県)

平成23年度の日精協学術教育研修会事務部門は、日精協新潟県支部の担当 で、「精神科病院の健全経営と危機管理」という研修テーマのもと、平成23年11 月10日(木)、11日(金)の2日間にわたり新潟グランドホテルにて開催され、全国から233名の受講生が参加した。開講式では、日精協新潟県支部長・ 長谷川まこと先生が開会の挨拶をされ、引き続いて日精協・山崎學会長が挨拶をされた。来賓挨拶として新潟県福祉保健部若月道秀部長や新潟市保健衛生部野本 信雄部長、新潟県医師会渡部透会長よりお言葉をいただいた。
 
第1日目の講演Ⅰは、「精神保健福祉政策の動向について」と題して、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課心の健康づくり対策官・荒川亮 介先生が講演された(レジュメでは同課課長補佐・中谷祐貴子先生が演者として記されているが、ご都合により欠席され、荒川先生のご登壇となった)(座長・ 白根緑ヶ丘病院院長・佐野英孝先生)。まず精神医療の現状について簡単にふれられた後、①精神保健福祉改革の取り組み状況、②自殺対策への取り組み、③震 災対応(心のケア)といった大項目について詳しいご説明があった。とくに①において、精神科病院からの退院および地域移行の促進のために、アウトリーチの 充実、精神科救急医療体制の構築、精神疾患を医療計画に記載し、医療供給体制の指針を示すこと、また、改正障害者自立支援法の施行に伴う諸施策や精神科病 院入院における保護者制度の問題点についても解説された。②③については誌面の関係上、省略させていただく。
 
午後からの講演Ⅱは、「医療事故・医事紛争について~医事紛争・医療裁判は何故起きるのか~(事故後の対応等の重要性)」と題して、日精協顧問弁護士・木 ノ元直樹先生(木ノ元総合法律事務所)が講演された(座長・白根緑ヶ丘病院事務局長・笹川征一氏)。最近の医事紛争原因の傾向として、純粋な医療ミスより も説明義務違反を問う事例が急増しており、テクニカルエラーからコミュニケーションエラーへシフトしているとのことであった。また、証拠保全手続きにおい て、医療記録に加えて事故報告書の提出を求めるケースが増大しているが、事故報告書は自己利用文書であって診療録や看護記録などとは性質が異なり、提出す る必要がないものなので、決して出さないように注意してほしいとのアドバイスがあった。
 
引き続いて講演Ⅲは、「精神科病院の労働問題について~職場のメンタルヘルス対策~」を、鶴巻克恕先生・秦慶子先生(鶴巻克恕法律事務所)の両弁護士が講 演された(座長・新潟信愛病院事務局長・石山朋秋氏)。労働者の自殺の現況についてふれた後、労働安全衛生法(以下、安衛法という)第3条第1項、第65 条の3および「安全配慮義務」が問われた判例について解説された。次に、安衛法第66条第1項などにより規定された医師と事業所の関わりについて、さらに メンタルヘルス対策と個人情報保護との関係、実際に健康問題が生じた場合の対応についても、判例を交えながら説明された。
 
初日の最後の講演では、演題Ⅳ「精神科病床数の今後の見通しと地域移行推進の前に改善しておくべき医療課題について」と題して、日精協アドバイザリーボー ドのメンバーでもある新潟大学医学部精神科教授の染矢俊幸先生が講演された(座長・三交病院理事長・坂本隆行先生)。これまでの新潟県の調査資料から、精 神科病床を占める統合失調症の患者数が予測通りに減少してきていること、そして、入院していない統合失調症患者では突然死が多く、突然死を防ぐために抗精 神病薬による代謝障害や虚血性心疾患などをいかに予防するかといった対策を講じておくことが重要であることを話された。
 
初日の研修会終了後には懇親会が行われ、アトラクションで新潟古町芸妓の踊りや鳴り物、三味線、唄などの芸が披露された。受講者のなかには初めて芸妓を観た者も多く、大変好評で盛り上がり、楽しく賑やかな雰囲気のなかで親睦を深めることができた。
 
研修会2日目の講演Ⅴは、山崎學日精協会長による「精神科医療の現状と将来展望」と題しての会長講演が行われた(座長・日精協新潟県支部長・長谷川まこと 先生)。初めに精神疾患全般について、外来・入院別に患者数・疾病別内訳、平均在院日数、年齢分布、精神科医師数の推移、精神科関連医療費などを概説され た。次に、高齢化に伴う認知症性疾患の動向・地域移行・自殺問題・医療観察法・社会保障のあり方などいくつかの個別のトピックスについて、最後に精神科医 療の将来像を、豊富な統計資料を引用し、わかりやすくグラフ化して説明された。次いで、精神科医療の将来像について、将来は在院患者の高齢化は必至である が、精神病床を削減するのではなく精神病床を転換すべきであるとのご見解を示された。最後に、東日本大震災による会員病院の被害と日精協の取り組みについ てご報告され、復興を支援していくことを表明された。
 
研修会の最後の講演Ⅵは、「日精協での医療事故の現状と問題点」と題して、日精協医療問題委員会担当理事でもある小阪病院理事長・東司先生が講演された (座長・日精協常務理事・柏崎厚生病院院長・松田ひろし先生)。精神科医療事故の現状として、不慮の事故(窒息、転倒、溺死)、自殺、患者間の暴行・傷 害・傷害致死・殺人が三大事故として挙げられること、そして、あくまでも日精協のデータではあるが、年間提訴数の年次推移は平成18年をピークに減少して おり、その理由として、①精神科病院の自助努力、②マスコミの論調の変化(医療崩壊への懸念)、③不況が考えられると話された。
 
講演終了後、正午から閉講式が行われた。日精協より受講者代表への受講証書授与に引き続き、日精協新潟県支部長・長谷川まこと先生へ感謝状が贈呈された。最後に、柏崎厚生病院院長・松田ひろし先生より閉講の挨拶があり、2日間の全日程が終了した。
 
本研修会の報告を終えるに当たり、長谷川まこと支部長を始め、企画実行された新潟県支部会員の先生方および関係者の方々の数々のお心配りに対して深く感謝申し上げるとともに、新潟県支部の今後のご発展をお祈り申し上げる。

(学術教育推進機構・学術研修委員会 / 稲野 秀、坂本 隆行)

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