2011年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 栄養士部門

期日/2011年10月13日(木)・14日(金)
会場/ANAクラウンプラザホテル金沢(石川県)

 平成23年度の日精協学術教育研修会栄養士部門は、10月13日・14日の両日にわたり、日精協石川県支部の担当で、ANAクラウンプラザホテル金沢で開催された。東日本大震災の影響が心配されたが、全国より183名の参加があり、盛大に行われた。
 
 開講式では、石川県支部長松原三郎先生が開講の挨拶をされ、続いて山崎会長の代理で学術研修委員会炭谷信行機構委員が主催者として挨拶した。来賓として、石川県知事代理の健康福祉部菊地修一次長と石川県医師会長の小森貴先生が祝辞を述べられた。
 
 1日目の最初は、「精神科病院におけるNST~チーム医療で行う身体管理~」と題して新阿武山病院栄養給食室室長の井戸由美子先生の基調講演が行われ た。はじめに一般病院におけるNSTでは、「低栄養」「褥瘡」のケアが中心となるが、精神科病院では、「体重増加」「メタボリックシンドローム」「便秘」 「喉詰め」の対策など精神科特有の合併症に対するケアが重要になると述べられた。
 
 体重増加やメタボリックシンドロームは、非定型抗精神病薬の副作用の側面もあるが、それには食生活習慣が大きく関わっており、食生活の改善が生活習慣病 の予防につながるため、多職種でチームを組み(NST)、認知行動療法に基づいた栄養指導や健康プログラムの実施が必要であると強調された。次に便秘は、 抗精神病薬や抗パーキンソン剤を服用している患者に起こりやすいが、治療には下剤投与だけではなく、腸内環境を整えることが重要であると述べられ、ラクト スクロースによる便秘改善効果について報告された。最後に、統合失調症患者の早食いと咬合力の低下について述べられ、自力摂取中の誤嚥や窒息事故の防止の ためにBGMを用いた環境づくり、咬合力・咀嚼力向上のプログラムを実施し、多職種協働にて早食い防止や咬合力向上に努めることが患者のQOL維持に大切 であると説明された。井戸先生は、本年度の精神医学会の会長賞の受賞者であり、臨床の現場で働く栄養士の方々には実践的で大変参考になる内容であった。
 
 ランチョンセミナーでは富山大学大学院医学薬学研究部(医学)・神経精神医学講座准教授の住吉太幹先生が「精神医学における栄養問題」について講演され た。抗精神病薬と耐糖能異常の問題について述べられ、さらに必須脂肪酸の多価不飽和脂肪酸について、たとえばアラキドン酸は統合失調症に対し、DHA(ド コサヘキサエン酸)は双極性障害に対して予防的あるいは治療的意義があることを先生のデータを交えて考察された。
 
 午後のはじめは「摂食障害」という題で、医療法人恵生会南浜病院副院長の川嶋義章先生が講演された。摂食障害の歴史、疫学、症状、原因、経過、治療と家 族の付き合い方について述べられ、摂食障害は、極端にやせているにもかかわらず、さらにやせを追求することから、「わがまま」病とみられやすいが、病気の 症状と患者を区別し、患者と一緒に病気に対処し、付き合っていくことが大切であると語られた。先生の臨床経験について話され、病気の治療は長期にわたるこ とが多く、さまざまなネットワークを大切にしてじっくり患者を支援していく必要があると述べられた。さらにチーム医療のなかに栄養士が入る必要性があるこ とについて強調された。受講者からの数々の質問に対し、先生はわかりやすく返答され、参加者にとって大変有意義な時間であった。
 
 次に、「精神疾患と栄養」というテーマでシンポジウムが行われた。シンポジストとして異なる職種の4人の先生が発表された。薬剤師の立場から森京子先生 (石川県立高松病院)が「抗精神病薬の副作用から体重増加を考える」、看護師の立場から北由希先生(小松市民病院)が「精神科看護ケアにおける栄養から合 併症の予防を振り返る」、医師の中村優先生(草津病院)が「精神科病院における栄養管理について~特に内科医の立場から~」、さらに栄養士の立場から山前 有子先生(かないわ病院)が「当院における栄養管理カンファランスへの取り組み~統合失調症と低栄養~」の演題で報告された。西宮弘之先生(曽我病院、全 国精神科栄養士協議会副会長)の司会でフロアからの発言も交えて活発な討論が行われ、栄養管理のうえでチーム医療が大切であり、患者さんのために各職種が バランスよく集まれる状態が望まれると締めくくられた。
 
 研修会1日目の終了後、同ホテルにおいて引き続き懇親会が開催された。石川の県産品を使った料理と地酒を満喫し、アトラクションの北陸の民謡集とゲームで楽しい懇親のひと時を過ごすことができた。
 
 2日目の最初は、特別講演として「精神科医療の現状と将来の展望」と題して山崎學会長が講演された。はじめに、精神保健福祉の動向について豊富な資料を もとに詳しく説明され、次に精神障害者の地域移行について話され、障害者制度改革や新たな地域精神保健医療体制の構築、アウトリーチ推進事業等を説明され た。また、認知症、自殺対策、医療観察法などのトピックスについて述べられ、精神科医療の将来像については、病床削減ではなく精神病床の転換が必要である と強調された。最後に、精神障害者は退院すると生活習慣が悪化し合併症が増加するため、地域における栄養指導が重要であると締めくくられた。
 
 研修会最後の文化講演は、「能登丼を通して食と地域活性化を考える」というテーマで、能登丼事業協同組合理事の金七聖子先生により行われた。演者は能登 町の歴史ある日本酒の蔵元「松波酒造」の長女(若女将)であり、まず最初に奥能登ウェルカムプロジェクトとの出会いについて話され、能登丼誕生までの苦労 を詳しく説明された。次いで、能登丼の定義と現在参加している57店舗の能登丼についてカラー写真で紹介された。最後に、能登丼の知名度を上げるためのマ スコミへの発信や全国丼サミットの開催、企業との共同企画、能登丼事業協同組合の設立を行い、地域の活性化のために精力的に活動していると話された。非常 にわかりやすく参加者の興味と食欲をそそる講演内容であり、今後の能登丼の発展が期待される。
 
 閉講式では、学術研修委員会棚橋裕機構委員が受講生代表に受講証書を授与し、石川県支部へ感謝状の贈呈を行った。次に石川県支部代議員の結城正名先生が講評を述べられ、最後に棚橋機構委員が閉講の挨拶をし、無事に研修会は終了した。
 
 今回の学術教育研修会を企画、運営していただいた松原三郎支部長ならびに石川県支部の諸先生方およびスタッフの方々に、心より御礼申し上げます。

(学術教育推進機構・学術研修委員会 / 炭谷 信行  棚橋  裕)

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