2011年度 日本精神科医学会学術教育研修会報告 作業療法士部門

期日/2011年9月8日(木)・9日(金)
会場/ホテルメトロポリタン秋田(秋田県)

 「共に~日々の生活を考える~」とのテーマで平成23年度学術教育研修 会・作業療法士部門が9月8日(木)・9日(金)の2日間、日精協秋田県支部の担 当で、ホテルメトロポリタン秋田にて開催された。3月11日の東日本大震災で開催そのものが危ぶまれたなか、秋田県支部長の後藤時子先生を始め会員の先生 方、ならびに関係各位のご努力で、全国から130名の受講者を迎えて開催されたことには本当に頭の下がる思いであり、敬意を表したい。開講式での支部長後 藤時子先生、日本精神科病院協会会長山崎學先生の挨拶の後、研修会が行われた。
 
 講演Ⅰは、日精協会長の山崎學先生が「精神科医療の将来の展望」との演題で講演された。はじめに精神保健福祉の動向として、外来・入院別に患者数・疾病 別内訳、平均在院日数、年齢分布などを概説され、次いで精神障害者の地域移行や認知症に関すること、自殺対策、医療観察法などについての問題点と現状の日 精協の取り組み等を説明された。そのうえで精神科医療の将来像や社会保障のあり方に関して、豊富な資料をもとにお話しいただき、最後に東日本大震災で日精 協として行ったさまざまな支援活動について紹介された。
 
 講演Ⅱは、「リハビリや社会復帰の妨げにならない薬物療法の工夫とサロン『ユックリン』の活動から」と題して、メンタルクリニック秋田駅前の稲村茂先生 が講演された。精神科医療の方向性を、主に統合失調症の包括的治療という視点から解説し、最近の薬物療法の知見もわかりやすく説明しながら退院促進や地域 支援の必要性・重要性をお話しされた。新規抗精神病薬を主とした効果的で副作用の少ない適切な薬物療法を行い、包括的医療を展開していくことが、これから 重要になっていくとしながらも、医療の枠は狭いため、いろいろな力を借りてやっていけばよいとのメッセージが印象に残った。
 
 講演Ⅲでは、「医療観察法病棟における作業療法~チーム医療と生活支援の立場から見た作業療法~」と題して、国立病院機構花巻病院作業療法士の菊池恭介 先生が講演された。まず医療観察法の概要や施行状況を紹介し、実際に行っている医療観察法のもとでのチームアプローチのあり方についてお話しされた。現場 で実際に行われている作業療法のプログラムや対象者や対象行為によって気配りが微妙に異なってくること等、症例も交えて紹介され、医療観察法のなかでの作 業療法士の役割やチーム医療の実際と問題点等話していただいた。
 
 続いて「チーム医療を考える」のテーマでシンポジウムが行われた。座長に秋田大学大学院医学系研究科助教の石井奈智子先生、シンポジストとして横手興生 病院(作業療法士)の鈴木新吾先生、杉山病院精神科デイケア(作業療法士)の佐藤文泰先生、生活訓練施設やまぶき(精神保健福祉士)の齋藤百合子先生、秋 田緑ヶ丘病院(看護師)の高橋賢司先生にご参加いただき、それぞれの立場からチーム医療についてお話しいただいた。
 
 長期入院者の退院支援チームとして、あるいはデイケアや地域のなかでの作業療法士の役割等、他職種との連携の難しさとともにその意義の重要さを再認識で きた。また、看護師からみた作業療法の取り組みや教育等を通して看護者の意識に変化が生まれ、結果としてよりよいチーム医療の熟成につながったことなど、 参考となる取り組みも紹介された。フロアからの質疑もあり、有意義な意見交換が行われた。
 
 1日目の日程を無事終了後、同ホテルにて懇親会が持たれた。秋田名物の特選日本酒、きりたんぽ鍋等の郷土料理に舌鼓を打ちながら和やかな雰囲気のもと、 参加者同士十分に親交を深めたようであった。アトラクションとして、なまはげや伝統的な「西馬音内(にしもない)盆踊り」が披露され秋田の素晴らしい伝統 の一端を垣間見ることができた。
 
 2日目の研修会は講演Ⅳ「リハビリテーションと社会的スキル」と題し、東北福祉大学健康科学部リハビリテーション学科教授の渥美恵美先生にご講演いただ いた。チーム医療のなかで起こってくるさまざまな問題点について、なかなか表面化しづらい職場の人間関係という視点から分析し、葛藤やその対処についてお 話しされた。
 
 後半は医師や看護師、理学療法士等専門職の社会的スキルに関する研究を紹介し、専門職の社会的スキルに対する関心は、対象者と効果的に関わり、他専門職 と協力するために必要なスキルであること、また、臨床の場は社会的スキルを習得する場であり、社会的スキルの高い学生は教育効果が高いことなどを話され た。
 
 講演Ⅴは「当事者の作業と支援者の作業~医療・保健・福祉領域での経験から~」と題して、あさかホスピタル診療支援部リハビリテーショングループ作業療 法士の渡邉忠義先生の講演が行われた。ここでいう作業とは人の生活そのものを指す生活行為のことであり、その人にとって意味のある作業が病気、老化、生活 の変化等によりその遂行が困難になった場合、それを回復、向上させる生活行為向上マネジメントという支援方法を医療・保健・福祉の3領域で実例を提示して 紹介された。
 
 さらに、精神障害者の地域生活支援には多職種チームが重要となることから、これからの作業療法士の形として、支援計画の策定、支援の役割分担等のマネジメントのできる総合作業療法士が求められてくると述べられた。
 
 すべての講演終了後、閉講式を執り行った。受講証書授与に続き日精協学術研修委員会委員長の伴亨先生から挨拶があり、最後に後藤時子支部長による閉講の挨拶ですべてのプログラムを終了した。
 
 東日本大震災の影響も残るなか、厳しい条件であるにもかかわらず研修会を開催していただき、日精協秋田県支部を始め関係各位のご努力に心から感謝いたします。

(学術教育推進機構・学術研修委員会/ 平安 明  伴  亨)

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