第21回医療経済実態調査結果で思うこと

2017年12月 山崎 學

 平成29年11月8日、厚生労働省は2016年度の医療機関などの経営状況を調べた医療経営実態調査結果を公表した。9日の朝日新聞の1面では、精神科以外の病院の利益率(収入に対する利益の割合)はマイナス4.2%の赤字で、1967年の調査開始以来3番目に低かったと報道している。しかし報告書によると、民間精神科病院については2015年度の0.2%から2016年度の▲1.1%に減少していると書かれている。一瞬、あれ、精神科病院はプラスではなかったのかと思った。
 医療経済実態調査における精神科病院の有効回答は189施設(平均病床数234)である。医業収益は前年度に比較して▲0.5%、介護収入▲9.9%、金額にして医業・介護費用損益差額は▲14,580千円で▲1.1%となり、前々年度と比較すると▲1.3%減である。国公立を除いた一般科病院と精神科病院の給与比率を比較すると、一般科病院では前々年度54.6%、前年度55.5%で金額の伸び率は1.6%増加しているのに対し、精神科病院の給与比率は前々年度63.8%、前年度65.1%で金額の伸び率は1.4%増加している。問題は、一般科病院と精神科病院の給与比率に約10%の開きがあることである。このことは精神科入院医療費・技術料が正当に評価されていないことを如実に物語っている。
 マイナス要因としては、医業収益の伸びが人件費、間接経費、消費損税等を含めた経費の伸びについていっていないことが考えられ、そこに大きな問題があると思っている。アベノミクスで有効求人倍率は1.52(平成29年9月度)と驚異的な数字となり、大企業中心に多額の内部留保が指摘されている時代において、統制経済で収入が制限されている医療業界は、人件費引き上げ財源がないまま他業種に優秀な人材が引き抜かれていくのを成すすべもなく見ているという状態が続いている。
 医療経済実態調査結果については日精協の医療経済委員会に詳細な分析を行ってもらうつもりでいるが、同時進行中の診療・介護・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定で精神科医療の実績がどのように評価されるかが大きな課題だと思っている。診療報酬改定財源として使われてきた薬価引き下げ財源は前々回の改定で財務省に召しあげられ、新規財源のないまま財政中立で行われる現行の改定制度は見直しを行う必要がある。4万床モデルでスタートし、36万床まで認めてしまった7対1入院基本料問題、地域医療構想に誘導されて急激に増えている回復期リハビリテーション病棟問題、我が世の春を謳歌している調剤薬局問題、軽度要介護高齢者を囲い込んでいる高齢者ビジネスモデル問題、外国に比べて3倍以上の薬価を維持させている後発医薬品問題等、制度改定で解決しなければならない問題が山積している。医療経済実態調査で明らかになったように、精神科病院の給与比率が一般科病院並みになるような精神科医療入院料・技術料の引き上げを政府に働きかけていこうと思っている。

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