紆余曲折がありましたが、来年4月、新しい専門医制度が始まります

 わが国の認定制度は、昭和37年の日本麻酔科学会が最初です。その後、学会主導の認定医(専門医)が次々と生まれていきましたが、医師の卒後研修は学会任せでした。
 平成16年、新医師臨床研修制度が開始され、医師国家試験合格後に2年間の初期臨床研修が必修化されました。しかし、諸外国で行われているような診療科ごとの領域別研修については、各学会任せのままで統一的な仕組みはなく標準化されていませんでした。
 そこで、厚生労働省は平成23年、『専門医のあり方に関する検討会』を設置して検討を重ね、平成25年4月に新しい専門医制度にかかわる報告書を公表しました。この報告書には、

  1. 専門医とは当該専門領域の標準的な医療を提供出来る医師であること
  2. 専門医の仕組みを2段階制(基本領域とサブスペシャルティ領域)とし、全ての医師がいずれかの基本領域の専門医資格を取得すること
  3. 基本領域の専門医資格に総合診療専門医を位置づけること
  4. 新たな第三者機関で認定する専門医を広告可能とすること

 などが記されました。
 この報告書を受けて平成26年5月7日、法人格を持った新たな第三者機関として「日本専門医機構」が立ち上がりました。そして、『専門医のあり方に関する検討会』の報告書の内容を厳格に遂行するために「質を担保する」という名目で“厳格なプログラム制と厳格な研修施設群での研修”を各学会に要請しました。このことには批判が相次ぎ、日精協を始め、多方面から「地域医療への深刻な影響がある」と指摘されました。そして、平成28年6月27日の日本専門医機構の初めての理事改選では、20名(後に21名)の理事が新任され、日精協からも理事が入り、再任した理事はわずか4人という総入れ替えに近い新体制となり、もう一度制度の問題点を修正するために、施行年度を一年延長することになったのです。
 しかし、一度問題視された新専門医制度への批判は収まらず、平成29年3月9日には、新専門医制度が国会にも取り上げられました。同年4月、塩崎厚生労働大臣(当時)は、厚生労働省に『今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会』を発足させ、新専門医制度について、全国知事会や全国市長会、病院団体など地域医療に関係する各構成員による意見交換を行い、専門医を担当する基本領域学会にも地域偏在対策についての意見を求めました。その結果、

  1. 専門医の取得は全ての医師に義務付けられたものではなく、医師が自ら社会に対する説明責任を果たすための自律的な研修の仕組み(義務化ではないことの記載)
  2. 研修の中心は、大学病院と地域の中核病院である(大学病院のみが基幹病院とならないようにするための記載)
  3. 女性医師等の多様な働き方に配慮したカリキュラム制を導入する(女性医師を始めフレキシブルな運用を可能にするための記載)
  4. 都道府県協議会の設置と機能の強化(地域医療への悪影響を排除するための記載)

 といった点がさらに修正されました。その後、8月2日厚生労働大臣談話(表)が発表され、「地域医療への影響については今後も厚生労働省が関与していく」ことが明示され、同月4日、機構は「平成30年4月から新制度を開始する」とする声明を発表しました。

(副会長 森隆夫)

 

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